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12月に出すパズディン本ガバ導入になった
催淫をよくわかってないふたり。無知であれ……

大勢の見張りもボディーガードも打ちのめされ、追い詰められた賞金首であるスパイスの密売人の悪足掻きは、脅しでもなく、発砲でもなく、ディンに大量のスパイスを浴びせることだった。獣はどんなに弱くても窮地に追いやられれば牙を剥くが、予想外の抵抗だった。立ち込める粉塵で霞む視界の中で、ディンは粉末を思い切り吸い込んでしまって噎せたが、いたって冷静に丸腰の密売人を捕縛し、自身のガンシップまで歩かせた。
飛び立つ前に、「サイイン効果があるスパイスをあれだけ浴びてなんともないのかよ。嘘だろ? マンドーはインポか?」と意味の解らないことを言われたが、ディンは相手にしなかった。そのあと密売人が逃げ出そうと暴れたので、他の賞金首同様、炭素(カーボン)冷凍(フリーズ)した。
仕事を終えて、『ネヴァロ』に着くまで、ディンはコックピットで一眠りした。時間が経つにつれ、スパイスを吸い込んだせいか、不調を感じていた。まるで思考することを脳が拒否しているように、意識がぼうっとする。身体も火照っている。これが、密売人のいっていたサイイン効果だろうか。だとしたら、一時的な症状であっても厄介だ。仕事は終わったので戦闘を行うことはないだろうが、動作が遅れたり、判断を誤る可能性もある。一瞬の隙が命取りになりかねない……。
気を揉んでいたが、無事に『ネヴァロ』に着いた。炭素(カーボン)冷凍(フリーズ)した賞金首たちをギルドに引き渡し、賞金稼ぎたちを束ねるグリーフ・カルガから報酬をもらい、ディンはそのままネヴァロ・シティの地下にある下水道に向かった。
ここには、ディンの同胞たちがひっそりと暮らしている。帝国軍によって汚染された故郷である衛星『コンコーディア』を脱してから、マンダロリアンたちは人目を避けることを強いられるようになった。帝国軍は、マンダロリアンたちを滅ぼそうとしているのだ。身を隠すようになっても、彼らは誇り高く生きている。
孤児だったディンは独り立ちをして共同体を去ったが、ディンにとって共同体のマンダロリアンたちは大切な仲間だった。賞金稼ぎとなって銀河を巡るようになってからは、孤児たちを養うために施しをしている。ひとりのマンダロリアンとして、その責任があるのだ。
鍛冶場(グレート・フォージ)にいるアーマラーに受け取ったばかりの賞金の一部を提供して、仲間の元で少し休むことにした。夜も遅い。体調も悪いし、久し振りに会いたい男もいる……。
歩く度に、ベルトの締め付けが気になった。それに、フライトスーツの生地が肌に触れる度に、やけにくすぐったく感じる。
――ベルトをキツく締めてはいないんだが。体調が悪いせいか?
ディンは顔を顰めて、燈の欠けた通路で立ち止まったが、すぐに歩き出した。目当ての男に会うべく、居住スペースに向かう。彼個人のスペースは、仲間の居住スペースから少しばかり離れた場所にある。狭い通路を進み、いくつも角を折れ、拓けた場所に出て、ようやくその姿を見付けた。
会いたかった男――パズ・ヴィズラは、椅子代わりのコンテナに腰掛けて、アーマーの手入れをしていた。胸当て(ブレストプレート)も、肩(ポール)甲(・ドロン)も、手甲(ガントレット)も、膝(ボウ レ)当て(イン)も、脛(グリ)当(ーブ)ても、ベルトさえも外している。フライトスーツとクロッチガードだけいう無防備な姿に、ディンは思わず声を掛けることを忘れた。
「戻ったのか」
 ベスカー製のヘルメットにも使える特殊な黒い研磨布で胸当て(ブレストプレート)を拭きながら、ヴィズラが一刹那顔を上げた。ディンは彼の傍に寄り、テーブルを挟んだ向かいにあるコンテナに腰掛けた。
 ヴィズラが傍にいるという安心感からか、肩の力が抜け、身体を蝕んでいる不調が血の流れにのって全身に広がった。視界がぐらりと揺れる。
「お前のベッドで少し休ませてくれないか」
「俺ももう寝るところなんだが」
「具合が悪いんだ」
 ヴィズラが手を止めてディンを見た。
「なら、休め」
 彼はそれだけいって、再びアーマーを磨き出した。
 ディンは居住スペースの端に置かれたテント型のコフィン・ベッドに入り、フロントパネルを下ろした。それからマントを外した。それでも息苦しさに耐えられず、胸当て(ブレストプレート)を外し、フラックベストも脱いだ。
 敷かれた薄いマットレスに横になって目を閉じるが、腰回りが重たいことに気付いて、ディンは歯を食い縛って顎を硬くさせた。こんな時にセックスがしたくなるなんて……。
 起き上がって、ディンはフロントパネルを開けて顔だけ出して、黙々とアーマーを磨くヴィズラの背中を見詰めた。この間も、下腹部がじくじくと疼いている。
「パズ」
「どうした」
「こっちにきてくれ」
「今手が離せない。あとにしろ」
「だめだ、今すぐにきてくれ」
ヴィズラはのろのろと首を巡らせた。
「そんなに具合が悪いのか?」
ディンは黙った。彼は鼻息をついて傍らのテーブルに胸当て(ブレストプレート)と研磨布を置いて、「子供じゃあるまいし」とごちて立ち上がって、コフィン・ベッドの方へ歩み寄ってきた。コフィン・ベッドの中は、体格のいい男がふたりが入ってもまだ余裕があった。
「大丈夫か?」
「……っ、さっき仕事で、スパイスをヘルメットに吹きかけられた」
 衝動のままに、ディンはヴィズラの首元を引っ掴んで引き寄せて、鋼鉄の口付けをした。しゃがみこんでいたヴィズラは、体勢を崩して片手を突いた。
「……パズッ……」
 距離が詰まって、ヘルメット同士が何度もぶつかり、かつり、かつりと小さな金属音が跳ねる。呼吸がかすかに乱れるほどに口付けても、まだ足りない。今すぐにでも繋がってしまいたい……。
「落ち着け、スパイスを浴びて具合が悪いんだろう」
「ああそうだ。抑えられないんだっ」ディンは喉の奥に詰まっていた空気を鋭く吐き出した。「お前がほしい」
 フライトスーツを握る手にさらに力を込めて、不安定な体勢のヴィズラをマットレスに引き倒す。
「おい、ジャリン、どうしたんだ。お前らしくもない」
「サイイン効果かもしれない」
「……なんだ、それは」
「わからない。賞金首がいっていた。とにかく、抱いてくれ。汗でも流せばスパイスも抜けるだろう」
「本当に、お前らしくないな」
 ヴィズラは困惑しているのか、小さく唸った。
「……わかった。抱いてやる」
「……っ」
 逸る気持ちのままに、ディンはヴィズラにのしかかった。鋼鉄の口付けを交わしながら、縺れ合う。視界が傾いて、ディンの背中がマットレスに沈み、影が被さった。ふっふと息を乱して、ディンは自身のフライトスーツの上下を繋ぐジッパーを開けて、生地をたくしあげた。上半身が首元まで剥き出しになった。
「直接、触れてほしい」腹に触れようとしたヴィズラの手を掴んで、ディンは切望を口にした。「お前の体温を感じたい」
 たのむ、と結ぶと、ヴィズラは身体を起こして、手袋(グローブ)を外し――腰回りを一巡するジッパーを開けて、フライトスーツを脱いだ。鍛え上げられた分厚い胴体を前に、ディンは身震いした。
「これでいいか?」
 太い首、隆起した胸筋、筋肉の詰まった腕、割れた腹、幅広の男の腰……はじめて見るヴィズラの肉体に触れたくなって、ディンは手を伸ばした。心臓の真上に手を添える。掌に感じた体温は、愛おしかった。
 覆い被さったヴィズラの首のうしろに手を回して抱き寄せる。胸とヘルメットが密着する。ディンの腹の底で、手に負えない灼熱が渦を巻いている。

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新刊情報・進捗

8月のWEBオンリーで出す新刊の本文サンプルを掲載しました。4P~5P分丸々掲載しています。
注意書きは別途記載していますので、必ずご確認ください。
通販はフロマージュさんで行います。8月22日(土)20時より通販を開始します。
よろしくお願いします!
また、展示のお題企画ですが、イベント当日に公開しようと思っていたのですが、難しくなってしまったので、前日にすべて公開します。

新刊情報・進捗

パズディン原稿進捗R18



Burn and Sleep

 捕らえた賞金首たちを賞金稼ぎを束ねるグリーフ・カルガへ差し出し、報酬を受け取ったディン・ジャリンは、右太腿の鈍い痛みを堪えながら、ネヴァロ・シティの地下へと続く階段を下っていた。
 最後の仕事で敵の猛反撃を受け、斬られてしまった。傷は浅いが、レイザークレストを降りる前に応急手当をするべきだったかもしれないが、胸当て(ブレストプレート)を損傷してしまったので、一刻も早くアーマラーに修理を頼まなくてはならない。
 階段を下りきって通路を少し進むと、見張りの同胞と遭遇した。同胞はディンを見ると、大きく頷いて道をあけてくれた。ディンも頷き返し、横を通り過ぎた。
ネヴァロ・シティの地下に広がる下水道は、燈が欠けていて複雑に入り組んでいる。かつて帝国軍に故郷『マンダロア』を蹂躙され、帰るべき場所を喪った同胞たちにとって、人目を忍んで生きるには究竟の隠れ場所となっている。熟練の防具鍛冶師であり、指導者でもあるアーマラーの作業場を中心として、多くの仲間がここでひっそりと生活を送っている。
 ディンは、灰色の惑星『ネヴァロ』を拠点としているギルドに戻った時は、できる限りここへ顔を出すようにしている。孤児たちを養うために資金を提供する責任があるからだ。
 いくつ目かの角を折れ、ディンは作業場に辿り着いた。中には数名の同胞がいた。視線が一斉にディンに集中する。炉で作業中のアーマラーは、首を巡らせてディンを見ると、「怪我をしている」静かな声で紡いだ。「誰か、手当てを」
「あとでいい」ディンは誰かが動き出す前に続けた。「それより、アーマーを修理してほしい」
「いいでしょう。ただ、少し時間が掛かる」
「どれくらい掛かる?」
ディンは胸当て(ブレストプレート)と肩当て(ポールドロン)を外した。防具がないのに地上に戻るわけにはいかない。
「一晩」アーマラーは淡々と続けた。「あなたはその間に手当てを」
「わかった。今夜は下水道(ここ)で過ごさせてもらう。寝床はないか?」
 空いていた作業台にアーマーを置き、ディンは首を傾げ、仲間に問い掛けた。
「私のところは空いていない」同胞のひとりが口火を切った。「すまない」
「いいんだ」
「パズ・ヴィズラ、あなたのところは?」
ディンが今夜は適当に通路で眠ろうと決意した時、アーマラーが炉に視線を溜めたまま言った。並んだ同胞の列の中で、一際背が高い大柄なパズ・ヴィズラのシルエットが揺れた。彼にバイザー越しに負傷した足を見られていることに気付いて、ディンは身じろぎした。
「俺のところなら空いている。治療もそこでやれ」
「……いいのか?」
「ああ。ついてこい」
ぶっきらぼうに言って踵を返したヴィズラのあとに続く。アーマーを外し、少し軽くなった身体は落ち着かない。痛み出した太腿を押さえたいが、堪えた。
ヴィズラの居住スペースは、孤児や同胞たちの居住スペースから離れた、通路の外れの窪みにあった。小ぢんまりとしたスペースで、地上から運んできたであろう簡易テーブルと簡易椅子、マンダロリアンのアイデンティティともいえる武器をしまうためのラックと、テント型のコフィン・ベッドしかなかったが、男ひとり分の寝床としては十分だ。
 ランプの仄燈に照らされたヴィズラは、武器ラックと壁の隙間から小脇に抱えられそうなサイズの箱を引っ張り出してきた。
「これを使え」
コフィン・ベッドの隣に置かれたそれは、ボタンひとつで無機な音を立てて大きくなった。ヴィズラが使っているものと同じ折り畳み式のコフィン・ベッドだった。側面は、入口として四角く切り抜かれている。
「応急キットは壁に掛かっている」
「ありがとう」
 ヴィズラはフンと鼻を鳴らすと、重量感のある足音と共に去っていった。ディンは彼の言葉に甘えることにした。治療を終えると、完全に血は止まり、痛みも引いた。
その後、食事を終えて、ディンはヴィズラの元に戻った。
ふたりきりだ。彼とこうして過ごすのは、子供の時以来かもしれない。孤児となってマンダロリアンの共同体に加わって間もない頃、共に眠ったことがある。その時にはすでにヴィズラはヘルメットを被っていた……。
思い出話をすることもなく、素っ気なく、ヴィズラは身を屈めて自分のコフィン・ベッドに入っていった。ディンもそれに倣い、用意してもらったコフィン・ベッドに入った。天井は低いが、ヴィズラでも横になれるサイズとだけあって、かなり余裕がある。ヘルメットの下でふーっと息を吐き、ブランケットを掛けて、ディンは瞼を下ろした。疲労が蓄積された身体から力を抜くと、意識はすぐに眠りの底へ落ちていった。
眠りに落ちて間もなく、ディンは微かな音で目を覚ました。一刹那の間に意識が覚醒すると同時に、癖でホルスターのブラスターに手を伸ばしたが、ヘルメットの聴覚センサーに届くのが乱れた呼吸音であることに気付き、警戒は不要であることを察した。
ディンは瞬きを繰り返し、訝しみながら片手を突いてゆっくりと上半身を起こし、入口から顔を出した。ランプの燈は消えて辺りは真っ暗だが、ヘルメット越しだから視界は問題ない。
呼吸音に混ざり、呻き声も聞こえる。向かいのコフィン・ベッドの中で、ヴィズラはブランケットもかけず、背中を向けて横たわっている。悪夢でも見ているのだろうか? それならば、起こした方がいいだろう……。
四つん這いでコフィン・ベッドを出て、しゃがんだまま片膝を突いて近付いて、広い背中に手を伸ばす。
「大丈夫か?」
声を掛けるのと同時に肩に触れた瞬間、ヴィズラが身じろぎした。
「大丈夫だ」
息が荒い。片膝を立ててカチャカチャと音を立ててベルトを締める彼の慌てたような仕草に、ディンはふと気付いた。
マスターベーションをしていたのだ。
「……悪い」
弾かれたように肩から手を離す。どうしていいかわからず、ディンはその場で固まってしまった。闇よりも暗く、重たい沈黙が降り注ぐ。しばらくして、長く息を吐き出したヴィズラが咳払いをした。
「溜まっているんだ。隣にお前がいるとわかっていながら、抑えられなかった」
巨躯に似合わない声量だった。
性欲――それはディンにとっては元来薄い欲求だったが、完全にないわけではない。欲望に駆られる気持ちはわかる。ディン自身、激しい戦闘を伴う仕事が続いたあとは、自慰をする時だってある。ヴィズラもディンも若さに振り回される歳ではないが、かといって老いてもいない。心身共に活動力に満ちている男の盛りだ。衝動を抑えられない時もあるだろう。
「おっ勃ったままだ。眠れそうにない」
ヴィズラは身体を起こし、ディンの方を向いて胡座を掻いた。ディンはおそるおそる視軸を落とした。アーマーに覆われていないヴィズラの無防備な股間が盛り上がっている。
欲情した男の息遣いに、ディンは歯を食い縛った。腹の底がじわじわと熱を帯びていく。互いに黙り込んだ。降り注ぐのは、ねっとりとした沈黙の幕だ。それは目には見えないが、コフィン・ベッドの薄幕よりもずっと厚く、重い。
「勃ってるぞ」
 沈黙を破ったヴィズラの言葉を理解するのに時間が掛かった。剣吞と眉を寄せて自分の股座を見れば、たしかに、フライトスーツが盛り上がっている。
「お前も溜まっているのか」
「自覚がなかった。滅多に処理もしないからな」
「マスの掻き方も知らないのか?」
「そういうわけじゃない」
「こっちにこい」
「……なにをする?」
「抜いてやる。どうせなら、気持ちいい方がいいだろう。ここには俺とお前しかいないんだ」
 ヴィズラのコフィン・ベッドの空いたスペースを見詰めて逡巡したが――ディンはゆっくりと中に入った。膝立ちで向かい合って、黙ったまま、フライトスーツの前を寛げたヴィズラに倣う。
下着から勢いよくまろび出た男の象徴は熱かった。ヴィズラの規格外の大きさのそれもまた、熱を持っているだろう……。
下着の中で蒸れていた性器を握られた。「小さいな」
「お前がデカすぎるんだ」
むっとして言い返したが、ヴィズラは鼻で笑っただけだった。
はじめて味わう自分以外の掌……。革(レザー)の手袋(グローブ)越しなので少し痛いが、摩擦は緩やかに続いた。血管を浮かせて勃起している一物が触れ合いそうになる。性的興奮を駆られ、ディンはヴィズラに触れた。手の中で痛いほどに膨らんで、びくびくと脈打っている。
どちらが先というわけもなく、ふっふと息を乱しながら、互いのものを重ね合わせた。ヴィズラから溢れ出た先走りが、密着した亀頭を濡らし、張り詰めた雁首まで伝い落ちている。ディンは根本を握り、先端にかけてせり上げていった。それをゆっくり何度か繰り返し、徐々にスピードを上げていく。ぬちり、ねちっ、と粘着質な音が跳ねた。どっぷりと漏れ出たふたり分の体液で滑りはよかった。鈴口を親指の腹で潰すように押すと、ヴィズラの身体が強張るのを感じた。ディンは舌なめずりをして、強弱をつけて肉の幹を扱いてやった。刺激を求めるままに、夢中で扱き合った。
「俺を見ろ」
 ヘルメットの面頬にヴィズラの肉厚な手が触れた。ヘルメット同士の距離が詰まり、かつりと音を立てて額部分が重なった。興奮を抑えきれていない息遣いは、官能を激しく駆り立てる。
混ざり合った体液に塗れた陽根が掌と擦れる音と乱れた呼吸音だけが重なって、ぐちゃぐちゃになって――先にヴィズラが射精した。すぐにディンも溜まっていたものをぶちまけた。濃い白濁を掌で受け止めたヴィズラを見据えて放心する。驚いたことに、ヴィズラはまだ衰えていない。
「抱かせてくれないか」
 ディンは再び、ヴィズラが発した言葉を理解するのに時間を要した。瞬きを繰り返し、ディンは何度か頭の中で言葉の断片を組み合わせた。
――抱く? お前が? 俺を?
「……本気か?」
「本気だ」
 間髪入れずに返ってきた返答に、ディンはヴィズラがこの状態をなかったことにするつもりも、茶化すつもりもないことを悟った。
 拒絶することもできたが、ノーとはいえなかった。ヴィズラは信頼できる男だ。孤児となり、マンダロリアンとして誇り高き共同体に加わってから、生活を共にしてきた。一緒に戦ったともある、大切な仲間だ。
――一度くらいなら……。
 乾きはじめた上唇を舌先でなぞり、ごくりと唾液を飲み込んで、ディンは口を開いた。「わかった」
 絞り出した声は、らしくない、弱々しいものだった。
 射精感に浸る間もなく、あれよあれよと組み敷かれた。太腿のあわいに割り込んで覆い被さったヴィズラの身体は厚かった。
「手早く済ませてくれ」
「そう急くなよ」
ヴィズラは掌に溜まっている白濁を、ディンの排泄器官に丹念に塗ったくってきた。
「なにをしている?」
「滑りをよくする必要があるだろう」
 濡れた指が、排泄器官の出口である窄まりを撫で摩る。ディンの括約筋はヴィズラの指を拒んだ。
「力を抜け」
 ぶっきらぼうに言って、ヴィズラは円を描くように孔を撫で摩ってきた。ディンはいわれた通りに、ふーっと息を吐いて腹から力を抜いた。ぞくぞくした。鎮火していた淫らな炎が、ふつふつと腹の底で燃え盛っていく。
指の腹に神経が集中している敏感な浅い部分を擦り上げられ、噛み締めたディンの歯の間から、鋭い吐息と呻き声が漏れた。ディンの反応を窺うように、ヴィズラは根気よく孔をほぐしていき、指を増やした。ディンはふっふと息を乱して繋がった場所に視線を向けた。中指と薬指がくねるように動いて孔に差し込まれていくのが見えた。指が根元まで埋もれると、掌が小刻みに規則的に前後した。
くねり、曲がり、指は確実に腹を拓いていった。内臓を掻き乱される未知なる感覚にディンは怯み、息も絶え絶えになった。指は生き物のように腹の中を突き進んでいく。甘ったるい刺激がディンの腹を冒していった。
「ん、っ……ぐ……」
 ふたり分の呼吸音と指が粘膜を搔き乱す粘着質な音だけがディンのヘルメットの聴覚センサーに届いた。繋がるために最低限の部分だけを剥き出しにして、行為は続く。会話は必要なかった。ランプの仄燈に照らされたコフィン・ベッドにこもるのは、男ふたり分の湿った息遣いと、汗ばんで火照った身体から滲み出る体臭と、盪くした果実が放つ芳香のような、噎せ返るほどの官能だった。
不意に掌の動きが止まり、前後していた指が腹側に向けて鉤形に折り曲げられた時、ディンは目の前が真っ白になった。不随意に腹と太腿が痙攣する。得体の知れないなにかが、脊髄を伝い上がってくる……! 鉤型に曲がった指の腹がなにかを探るように滑り、ある一点を押しやった。
「……っ!」
 瞬発的に快楽が背骨を駆け上がり、ディンの太腿が跳ね上がった。腹の上で緩く勃起していたペニスから精液が噴き上がった。
 びくびくと身体を痙攣させて弱々しい呼吸を繰り返しているディンを見下ろし、ヴィズラは指を引き抜いた。
「もう、限界だ」
 お預けを喰らっていた一物が、ディンの腹に潜り込もうとしている……。
「そんなデカいもの、挿(は)入(い)るわけがない」
「挿入る。そのためにほぐしただろう」
 ヴィズラはディンの片膝の裏を掴み取ってさらに足を広げさせ、自らの肩にディンの踵をのせた。それから自身の根元を握ると、先端で尻の割れ目をなぞり、睾丸を押し潰し、一度も男を受け容れたことのない孔をねちっこく詰ってきた。
「……ぐっ」
 ディンは大きく息を吸い、できる限り腹から力を抜いた。孔に押し当てられた亀頭が、腹の内側に押し込まれていく。痛みはほとんどなかったが、少しずつヴィズラを受け容れると、内臓を押し潰されているような感覚に襲われた。
「う、ぐっ……」
 圧迫感に合わせて、じわじわと苦しみが迫り上がってくる。ディンはなんとか浅い呼吸を繰り返した。泳がせていた視線を繋がった部分で止める。太く逞しい肉杭が、深々と腹に突き立てられている。
「……全部挿(は)入(い)った」
 囁きのあと、ヴィズラはゆっくり動きはじめた。腹の隙間を埋めている塊がずるりと引く。その感覚はまるで排泄時の脱力感のようだ。
「あっ、あぅ、ぐ……」
 抜け落ちそうなところまで下がると、ヴィズラは腰を止めた。そこから分厚い身体はしばらく動かなかった。彼は直腸の攣縮を楽しんでいる……。
 腹に居座る圧迫感を逃すために深呼吸をしていると、ピストン運動がはじまった。引いては押し込む動きに合わせて、ディンの口から反射的に呻き声とも溜息ともつかない声が漏れた。女が腹を突かれている時に出る嬌声と同じだと気付いた時、ディンの中で羞恥心が噴き上げた。
 抜き差しはスムーズに続き、尻たぶと、はち切れんばかりに張り詰めた睾丸がぶつかりあって、生々しい湿った音が弾けた。粘着質な音はディンの意味を成さないか細い声と溶け合って、コフィン・ベッドの中にこもった。
 腰を揺すっているヴィズラの片手がディンのフライトスーツのジッパーに触れた。左から右にジッパーが動き、肌が覗く。手が隙間に差し込まれ、腹から首元に向けて滑った。フライトスーツがたくしあげられ、鍛え上げられた、色の白い、均整の取れたしなやかな肉体が胸元まで露わになった。括れた幅広の腰。引き締まった腹。筋肉で盛り上がった胸筋……ディンはされるがままに、肉体をヴィズラに委ねた。
「……そそるな」
 ヴィズラはさらに身体を乗り出して、上から押し潰すようにディンを抱え込み、腰をくねらせた。肉と肉がぶつかる破裂音が乱れた男ふたりの呼吸音に被さる。血の通った男同士の交わりの気持ちよさに、ディンは打ちのめされた。
「は、あ、あっ……! ……ぅっ」
 抽迭が繰り返されるうちに、得体の知れないなにかがディンのはらわたを食い破り、みぞおちの辺りで渦を巻いた。
「…………! おっ――」
 ヴィズラは一息にディンの最奥を貫いた。臓腑の窄まりをぶち抜かれ、瞬発的にディンの全身の筋肉が強張り、脱力し、また強張った。息がうまくできない。みぞおちで渦巻いていたなにかが破裂した。
「〜〜〜〜っ!」
 一刹那のうちに、目の前で火花が散った。声にならない声を上げ、ディンはヴィズラの胸を押しやった。たしかに腕を突っ張ったが、力は入っていなかった。股座で揺れていたディンの陽根から、どっぷりと体液が溢れ出たが、それに気付いたのはヴィズラだけだった。
 ディンは、幼い子供が〝いやいや〟をするように首を振ることしかできなかった。
「ケツでイったのか?」
 ヴィズラの問い掛けに、ディンは答えられなかった。押し寄せる快楽の怒涛に飲み込まれ、気を失わないよう抗うのに精一杯だった。
 ヴィズラは上半身を起こし、ディンの両足首を掴んで、短いストロークで奥を突く動きを繰り返した。ディンは「やめろ」と懇願したが、呂律は回っておらず、ヴィズラに鼻で笑われた。
「俺もイかせてくれ」
 奥に留まったままヴィズラは欲望を口にし、ラストスパートを掛けた動きに切り替えた。ディンの中で、絶頂の導火線に再び火が付いた。脊髄に絡まった導火線は短くなっていき、迸る快楽の熱は瞬く間に脳髄まで迫り――爆発した。
「あ――ああっ……!」
 極地感に飲み込まれた肉体はいうことを聞いてくれない。気持ちがいい。苦しい。わけがわからない……。
「っ、はっ、射精(で)るっ……!」
 ヴィズラは腰を止め、ディンの体内で弾けた。長い射精だった。間歇的に出る精液がすべてディンに移される。射精を終えてもヴィズラはすぐに去らず、もっと奥へ注ぐように何度か抜き差しをした。腹の中を掻き混ぜられて、思わず身震いしてしまう。
 拡張した孔から抜け出た陽根は、さすがに萎えていた。
 ディンの呼吸に合わせてひくつく孔から子種が溢流するのを見下ろして、ヴィズラは「悪くなかっただろう」いった。「俺とお前の秘密だ」
 ヴィズラはディンの頭の横に両腕を突っ張った。ヘルメットが引き合って、額が硬い音を立てて重なる。ディンは腕をヴィズラの首のうしろに回した。埋め火にも似た快楽の名残が、間に成立した秘密を暖めていく。
「この秘密を共有してやってもいい」
 ディンはまっすぐにヴィズラを見詰めた。
 間にあるのは愛情が成す行為ではない。性欲を発散するためのものだ。それは互いに理解しているが、端緒がなんであれ、関係を持ったのなら、慰め合ってもいいだろう。ネヴァロの夜は、長いのだから。



ディンは、ネヴァロ・シティの地下にある下水道でひっそりと暮らす同胞たちの元を積極的に訪うようにしている。孤児たちを養えるように資金を提供する責任があり、アーマラーに防具のメンテナンスをしてもらう必要もあるからだ。
 そしてもうひとつ、決して口にはできない目的がある。それは同胞であるヴィズラに会うためだ。彼とは――肉体関係を持っている。
 以前、寝る場所を提供してくれたヴィズラの寝床で、ちょっとした勘違いで自慰の邪魔をしてしまって、劣情を発散できなかった彼と互いのナニを扱き合い、それだけでなく、「抱かせてほしい」と言われ、そのまま承諾したのがきっかけだった。それっきりで終われば一夜の過ちとなったかもしれないが、事後にはすでに、互いの間には〝秘密〟ができてしまっていた。
 ヴィズラとの性交渉は、性欲を発散するためのものであって、愛情は間にはない。肉体だけの関係であるから、色事のすったもんだもなければ、面倒な駆け引きもない。楽でいい……。
防具鍛冶場でアーマラーへ孤児たちへの支援金を渡し、地上に戻ろうと鍛冶場を出て、ディンは腹が減っていることに気付いた。ネヴァロに戻る前になにか食べてくればよかった……。ガンシップに肉詰めがあったことを思い出した時、少し先の角から見慣れたシルエットが現れた。ヴィズラだった。
 ヴィズラはディンを見ると、一瞬足を止め、「時間あるか?」近付いてきた。
「なにか用事があるのか?」
 自分よりも頭ひとつ分背の高いヴィズラを見上げて、ディンは首を傾げた。ヴィズラは腰に手を当てて、深い溜息をついて首を振った。
「ああ。身体が鈍って仕方ない。少し付き合ってくれ。手合わせがしたい」
「俺じゃなきゃだめか?」
「お前くらいしか俺の相手はできないだろ」
「……そうかもな」
 ヴィズラとは何度も手合わせ――というには荒っぽいかもしれない。子供の頃から喧嘩をしては、取っ組み合いをしてきたのだから――してきた。鍛錬にはなる。ちょっとした息抜きにも。
「あっちへ行こう。ここは狭すぎる」
 踵を返したヴィズラのあとに続き、ディンは頭の片隅で肉詰めのことを考えた。しばらくはお預けだ。
 同胞たちの居住スペースを離れ、入り組んだ道を進み続け、やがて拓けた場所に出た。低い天井や、壁に組み込まれた太く頑丈な鉄骨が剥き出しになっている。外へ繋がっている水門が近いのか、弱い風が吹き抜けていた。
 前を歩いていたヴィズラが鷹揚と足を止め、振り返った。数メートル離れていても、威圧感を感じた。やる気満々だな、とディンは思った。
 右足のホルスターからヴィブロナイフを取り出して構える。ヴィズラのヴィブロナイフの切っ先がディンに向いた。「吠え面かくなよ」
「お前こそ」ディンは一歩踏み出した。
 不意に風が止み――ディンは駆け出し、一気に距離を詰めた。ヴィズラのヴィブロナイフの刃が真っ直ぐにディンの胸元に飛び込んでくる。ディンは身体を捻って素早く躱し、回旋力の勢いのままに腕を振って切りかかったが、ヴィズラの刃がそれを受け止めた。
 刃が離れ、ぶつかり、またぶつかった。何度もぶつかりあって剣戟が反響する。ヴィズラの一撃一撃が重い。隙を突いて体勢を崩そうと一撃蹴りを見舞ったが、彼はよろめきもしなかった。ディンの刃がヴィズラの胸当てを一閃すると、火花が散った。
 ディンは身体を屈め、ヴィズラの胸に飛び込むように、渾身の力を込めて突進した。そこでようやくヴィズラがたたらを踏んだ。重心の掛かった、軸にした片足目掛けて足払いをしかけようとして、襟元を掴まれた。
「…………!」
ふっと地面から両足が浮き、視界が反転する。目を瞠った時には、ディンは背中から叩きつけられていた。全身が軋むような衝撃に息が詰まった。咄嗟に起き上がろうとしたが、既に首元にはヴィブロナイフの切っ先が触れていた。
「俺の勝ちだ」
 ヴィズラの翳るヘルメットを見据え、ディンは苦笑する。「今回はな」
 片手が差し出される。その手を取り、ディンは立ち上がった。ヴィブロナイフをしまうと、アドレナリンで上昇していた心拍数が徐々に落ち着いてきた。だが、まだ背中が痛む。顔を顰めていると、ヴィズラの視線を感じた。首を巡らせる。バイザー越しに、明らかに目が合っているはずなのに、ヴィズラはなにもいわない。
「どうした?」
「お前を見ていた」
 腰から抱き寄せられ、身体が密着した。ディンのヘルメットと、俯いたヴィズラのヘルメットの額の辺りが重なって、小さくかつんと無機な音が鳴った。
「……抱かせてくれ」
 聴覚器官に直接声が届く距離だった。身体が熱いのは、血の巡りが速くなったからだ……そう言い聞かせて、ディンはごくりと唾を飲み込んだ。


壁を這う鉄骨に両手を突くと、うしろから腰を挟み込まれた。手はそのままするりと下肢へ滑り、尻を伝って前に回った。
「自分で脱げる」
「こっちの方がそそるだろ」
 自分の掌よりも一回り大きく肉厚なヴィズラの手が下腹部を這い、ジッパーと下着を下ろされた。下着の縁に指が引っ掛かって下に引っ張られると、まだ萎えている一物が露わになった。頭のうしろにヴィズラの息遣いを感じながら、ディンは俯き、突っ張った両腕の間から自分の股間に視軸を向けた。うしろから伸びたヴィズラの手が、慣れた手つきで男の象徴を包み込むのが見えた。
 まだ硬くなっていないそれは、揉みしだかれ、撫で摩られるうちに質量を増していった。血の流れが速くなって、身体が火照ってきた。鈴口からぽってりとした露が溢れる。ヴィズラは親指の腹で鈴口を詰って露を潰し、肉の幹全体に塗り広げてきた。一気に滑りがよくなって、性器を包み込むヴィズラの手が緩やかに上下する。雁首を指の輪でキツく絞められ、ディンは歯を食い縛った。男同士なのだから、どこか気持ちいいかお見通しなのだろう。
 ヴィズラの顎がディンの肩口に載る。彼の息遣いには、噛み殺せない性的興奮が混じっていた。ヴィズラから与えられる快感を求めて、ディンは身を任せた。体液にまみれた男の本能と掌が擦れて、ちゅこ、ちゅこ、と淫らな水音が跳ねる。気持ちがよかった。
 ヴィズラに腹から抱き寄せられた。摩擦は勢いを増し、ディンの中で沸点が近くなる。
「……はっ……」
 下腹部にあったヴィズラの手の甲に自身の掌を被せ、ディンは目を閉じた。あと少し……あと少しで――。
「イきそうか?」
「……ああ」
 頷くと、スムーズに動いていた手が徐々に勢いを失くしていった。心臓の辺りまでせり上がっていた真っ白な法悦(エクスタシー)が遠のいていく。もどかしさが込み上げて、ディンは身震いした。
「とめ、るな」
 不満を漏らすと、ヴィズラは喉を震わせて笑った。楽しいといわんばかりの、小さな笑声だった。
 焦らすように、指の腹が裏側を上から下になぞった。指は三度往復すると、張り詰めた傘下の括れで止まった。触れているだけなのに、甘ったるい強烈な痺れがディンを襲った。ヴィズラは再び陽根を握ると、先ほどよりも弱い力で、長いストロークで扱いてきた。強弱をつけて責め立てられて、ディンは思わず喘いだ。目の奥が熱くなって、遠のいていた法悦が一気に爆発する。
「……あっ」
 ヴィズラの手の中で呆気なく果てた。間歇的に噴き出た精液は、指の隙間から滴り落ちて、足元に溜まりを作った。ディンは喉の奥で詰まっていた酸素を吐き出した。灼熱は去り、蕩けるような快楽の余韻が夜の帳のように素早く降りてきたが、これからが本番だ。
 剥き出しになった尻を少しだけ突き出すと、精液を受け止めたヴィズラの指が窄まりに触れた。
 指はじっくりと時間を掛けてディンの腹を拓いていった。直腸の襞をねちっこく撫で摩られた時は、足から力が抜けそうになって、鉄骨に突いた手に力がこもった。一本だった指が三本になる頃には、耐え難いほどの劣情がディンの下腹部を支配していた。
「……挿入(いれ)てくれ」
 硬くさせていた顎の力を抜き、ディンはストレートに欲求を口にする。粘着質な音を立てて粘膜をほぐしていた指が引き抜かれて、耳朶に届くのは、欲情した男同士の湿った息遣いだけになった。
「ずいぶんおねだり上手になったな」
「盛ってるのはお前の方だろう」
「ハッ、いつも善がってるくせに、よくいう」
 官能に不釣り合いな雰囲気になったが、手に負えない劣情がふたりを黙らせた。
 ヴィズラに片側の尻たぶを鷲掴みにされ、外側へ引っ張られた。これでは、しとどに濡れた拡張した孔が丸見えだろう。ディンは羞恥心から俯いた。衣擦れの音のあと、ややあって、重量感のある凶悪な昂りが尻の間に載った。亀頭が孔に押し当てられては離れる。昂ぶりは尻の間を何度か往復した。挿入前に、支配欲を剥き出しにした雄が行うマーキングのような行為をヴィズラはいつもする。
「……んっ」
 圧倒的な大きさを誇る男の本能が腹の内側に食い込んでいく圧迫感に、ディンは思わず眉を寄せた。何度味わっても、この感覚は慣れない。
「……っ、キツいな」ヴィズラはみっちりと詰まった腹の隙間を突き進んでいく。「喰いちぎらないでくれよ」
 腹の奥を暴かれて、ディンは息も絶え絶えになった。腰を抱きかかえられ、律動がはじまった。腹を突かれる反動で喉から押し出される弱々しい声に、尻たぶに張り詰めた睾丸がぶつかる生々しい音が被さって、辺りに反響する。
 待ち侘びた甘い快感に、ディンは身震いした。腹の底に沈んでいた形のない淫らな陶酔感が浮上して、身体を駆け巡る。
 膝裏に回った手に片足を持ち上げられ、バランスを崩しそうになって、ディンは反射的に目の前の鉄骨の縁を掴んだ。腹の筋肉が緩み、ヴィズラはディンの体内のさらに深い場所目掛けて突いてきた。
「おっ」
 どちゅんと重たい音が弾け、ヴィズラだけが達することができる臓腑の最奥をぶち抜かれ、ディンの総身は痙攣した。股座で動きに合わせて揺れていた性器から、どっぷりと勢いのない体液が噴き出て、地面に飛び散った。射精感とは違う感覚に、ディンは困惑した。身体がバラバラになったかのような感覚を覚えた。生理的な涙が湧き、鼻水が垂れてきて、顎の筋肉は緩み切って、喘ぎ声が止まらない。
「あ――あっ、ぁ、あっ……ま、待て」
「……待てるかよ」
 ヴィズラの声は、切羽詰まっていた。ディンの中でとめどなく羞恥心が込み上げたが、本能は、さらなる怒涛を求めていた。
「今、イっただろ。締まったぞ」
「……っ、いう、なっ」
 ディンは火照った顔を巡らせてヴィズラを睨んだが、無駄な抵抗に過ぎなかった。肉襞を引き潰すようなねっとりとした腰の動きで、ヴィズラはディンの泣き所を責め立ててくる。
「俺もイきそうだ」
 腰を揺すりながら、ヴィズラはヘルメットをディンの肩口に埋めてきた。腹の内側を強く叩かれ、突き上げられ――目の前が真っ白になって、ディンは喉を反らした。一刹那忘我するほどの極致感が弾け、脳髄で火花が散る。
「~~~~~~っ!」
 全身の筋肉が強張った途端、弛緩した。膝裏を掴んでいるヴィズラの手に力がこもる。彼は低く唸った。ディンの腹の中で熱いものが流動し、肉体がいっそう隙間なく密着した。
 互いにすぐには動けなかった。揃って息が乱れていた。ヴィズラがのろのろと腹の内側から去って、吐き出された精液が重力に従って流れ落ちてきた。生温い白濁は筋を描いてディンの内腿を濡らした。まだ震えている太ももになんとか力を込めて、ディンは構わず下着をあげた。
「平気か?」
「ああ」
 ディンが素っ気なく返すと、ヴィズラは頷いた。まだなにか言いたそうだったが、彼は結局、なにもいわなかった。
 性の衝動が生臭い静寂に掻き消されていく。恋人同士ではないのだから、事後に甘ったるい話もしない。すっきりしたら、いつものようにさっさと解散する。ヴィズラは同胞の元へ戻り、ディンは仕事に戻る……。
 来た道を戻りながら、ディンはヴィズラの広い背中に視線を溜める。ヴィズラのヘルメットの感触がまだ首元に残っていた。彼の息遣いも、耳に残っている。そのことに名残惜しさを感じる自分に気付いて、ディンは動揺した。
 視線に気付いたのか、ヴィズラが足を止めて振り返った。
「どうかしたか?」
「……いや、なんでもない。気にするな」
 腹が減っているから、過敏になっているだけなのかもしれない。ガンシップに戻ったら、シャワーを浴びて、肉詰めを食べよう……。
 どこまでも続く下水道の壁に、不揃いなふたつの影が張り付いている。それは仄燈に照らされて、角度を変えるたびに、寄り添ったり離れたりしていた。




「話がある」
 見張りをしているヴィズラの前に立ちはだかったディンがそういった時、燈の欠けた下水道の通路に緊張が走った。ヴィズラと同じく巡回をしていた同胞たちは顔を見合わせ、誰もかれもがヘルメットの下で剣呑と眉を寄せ、胸の内で呟いた。「また喧嘩か」
「なんだ。言ってみろ」
 威圧的なヴィズラに対し、ディンは辺りを見回してから、「ふたりきりで話がしたい」平静といった。
「この場で言え」
 会話を聞いている同胞たちを一瞥して、ディンは溜息をついた。
「やりたいことがある。お前に頼みたい。ちょっとした鍛錬だ」
「それなら付き合ってやる」
 広い場所へ向けて歩き出したふたりに続いて、興味を持ったらしい同胞たちがついてくる。住居スペースから離れた場所には、拓けた場所があるのだ。
 数名で列をなし、男たちは狭い通路を歩き続けた。いくつもの角を折れて、組み込まれた鉄骨が剥き出しの場所に辿り着くと、ディンは背負っていたアンバン・スナイパー・ライフルをヴィズラに投げ渡した。これは銃身の先端に二股状の刃がついていて、相手を殺さずに神経を麻痺させて無力化させるために電気を放つことができる。
「この間の仕事で電撃で痛い目に遭わされた」壁の方へ歩きながらディンは続けた。「一、二発なら喰らっても耐えられるが、耐えても隙ができる。素早く体勢を立て直せるようにしないとまずい」
「そのために、これでお前を痺れさせろと?」
「そうだ。少しでも耐えられるようにしたい」
「ただ喰らわせるだけじゃ面白くない」
「ああ。だから、手合わせも兼ねて、だ」
 マントの裾を翻したディンと数メートル距離を置いて向かい合うヴィズラ……見物にきた同胞たちは、固唾を飲んで見守った。元来電撃が効きにくい種族もいるが、マンダロリアンは別だ。アーマーも衝撃を受け流すことはできない。耐えられたとしても、精々短時間だ。継続的に喰らえば気絶する。ディンの言う通り、そうなる前に態勢を立て直して、敵対者を始末する必要がある……。
 ディンは右足のホルスターからヴィブロナイフを抜いて駆け出し、ヴィズラが銃身をディンに向けた。鋭い刃は電気を帯びて蒼白く発光しはじめる。ディンは二度素早く攻撃を躱したが、電気を帯びた尖先が脇腹を掠めた時、苦し気な唸り声を上げた。ヴィブロナイフの柄が攻撃を弾く音が反響し、どちらも譲らない攻防が続く。
 足に電撃を受けた一瞬、隙ができ、ディンは腹に突きを一撃喰らった。バチッと電気が弾ける音がして、ディンの身体が後方に吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
 ディンはすぐに起き上がろうとしたが、身体に力が入らないのか、崩れ落ちた。同胞のひとりが「手当てをした方がいいんじゃないか」と声を上げる。ヴィズラはライフルを下ろした。
「世話の焼ける奴だな」
ヴィズラはディンの方へ顔を向けながら、ライフルを同胞に投げ渡し、溜息をついた。
「俺のところでしばらく休ませる」
 彼は鷹揚とディンの傍でしゃがみこみ、衰弱しているディンを横抱きにして立ち上がった。
「……すまない」
 消え入るような弱々しい声に、ヴィズラはまた溜息を零した。


 ヴィズラはディンを自身の住居スペースまで連れて行き、コフィン・ベッドに寝かせ、未だに電気を帯びていた胸部を覆うアーマープレートを外してやった。
 アーマープレートを外している間も、横たわったままディンは呻いていた。微かに聞こえる息遣いは、敗北に屈したことを嘆くように弱々しい。こんな風に弱ったディンの姿を見るのは、はじめてだった。
「おい、大丈夫か」
 さすがに心配になって揺さぶると、ディンはヴィズラの手を覆うように触れてきた。彼は唸るだけだったが、指が僅かに力んだので、ヴィズラはそれ以上なにもいわなかった。
 フラック・ベストに覆われた胸元が、呼吸に合わせて膨らんだり、へこんだりする。アーマープレートを外して気付いたが、こうしてみると、ディンの身体がずいぶんしなやかだ。無駄のない引き締まった、均整の取れた身体の輪郭は、フライトスーツ越しでもわかる。
――この身体を夜すがら抱いているのか、俺は。
 ヴィズラの腹の底で劣情が鎌首を擡げる。こんな状況で欲情したことに苦笑して、ディンから視線を逸らした。
 不意に名前を呼ばれた。首を巡らせると、ディンがのろのろと腹に手を置いて「迷惑をかけた」いった。「おかげでだいぶ楽になった、ありがとう」
「……そうか」
 ふいと顔をそむけて黙り込んだヴィズラを、ディンは頭を傾けてじっと見詰めた。
「どうした? らしくないな。詰られるかと思っていたんだが」
「それどころじゃなくてな」
 沈黙がふたりの間に降り注いだ。完全に覚醒したディンが「まさか」口火を切った。「勃ったのか?」
 ヴィズラは背筋を伸ばした。今度はディンが黙り込む番だった。
「抱かれてもいい」
 腹に置いていた手を床に置いて、ディンは囁いた。
 衣擦れの音だけがした。テント型のコフィン・ベッドの片隅に置かれた、簡易テーブルのランプの仄燈に照らされたシルエットが重なった。
 ディンの折り曲がった両足の間に身体を割り入らせ、ヴィズラは彼を見下ろした。互いのヘルメットの内側にこもる息遣いは、湿っていて、肉欲の熱気に満ちている。
 ディンの括れた腰を挟み込んで、腹を滑って、胸元まで撫で上げた。普段の交わりでは触れられない胸元に、フライトスーツ越しに触れている……。
 筋肉で隆起した胸を左右から押し上げる。手に吸い付くような柔らかさだ。直接触れたくなって、ツナギ状のフライトスーツの上下を繋いでいるジッパーを開ける。黒い生地の間から、色の白い肌が覗いた。隙間から手を差し込んで生地を押し上げる。古傷がいくつもあった。剥き出しになった胸に触れると、くすぐったいのか、ディンは身体を強張らせた。
「そんなところに触れても、男は感じないと思うが」
「試す価値はあるだろう」
 ヴィズラは身体を乗り出して腕を伸ばし、簡易テーブルの抽斗から、潤滑油のボトル――ディンが以前持ってきたものだ――を取り出した。
 指先に中身を少し垂らして馴染ませて、乳首に親指の腹を置いた。控えめな突起を軸にして撫で摩り、乳輪を一巡し、摘み上げる……両方とも詰るうちに、ディンが顔を逸らした。
「感じるか?」
 すっかり硬くなった乳首を指の腹で掻いて、ヴィズラはわざと訊ねる。本当は訊かなくてもわかる。快感を感じている時、ディンはいつも顔を逸らすのだ。案の定、ディンは黙ったままだった。
 潤滑油でぬらぬらと照った乳首は、いやらしくぷっくりと尖っている。その様がヴィズラの劣情を煽った。腰回りが急速に熱を帯びていく感覚がして、ヴィズラはごくりと喉を鳴らした。いますぐにでも男の本能をブチ込んでやりたい……。
 指の腹で乳首を挟み込み、摘み上げると、ディンは「あっ」と声を漏らした。見れば、股間が盛り上がっている。
「男はここじゃ感じない、だったよな」強弱をつけて軸を指の腹で押し潰す。「本当に感じてないのか?」
「……っ、感じてなんか、ないっ」
 両腕を突っ張って、ディンはヴィズラを押しやった。それから起き上がり、「挿(い)入(れ)るなら、早くしろ」自分の股座に手をやり、繋がる部分を露出させた。そこは緩く屹立していたが、彼はそれを見られないように、両膝を突いて背中を向けた。
 ほくそ笑みたいのを堪え、ヴィズラも膝立ちになり、フライトスーツの前を寛げた。解放された性器は痛いほどに膨れて天井を向いた。ヴィズラはディンをうしろから抱き寄せた。胸元にディンが寄り掛かり、身体が密着する。両足をさらに開かせて、マントを捲り上げ、潤滑油でねとつく指で窄まりを探り、ほぐしていく。
「ん……くっ」
 孔を拓かれて、ディンは息を乱した。ヴィズラは空いていた片手を胸元に滑らせ、再び乳首に触れた。
「ふれ、るなっ……」
「俺が楽しむだめだ」
「……っ……」
 新しく見付けたディンの泣き所を責め立てながら、ヴィズラは時間を掛けて孔をほぐしていった。
 軸には直接触れずに乳輪を一巡したり、押し潰したり、指先で弾いた。孔の奥へ指を進めるのに合わせて、きゅっと乳首を強く摘まむと、腕の中でディンの総身が大きく痙攣した――彼は射精していた。
「……っ、~~~~~……っ!」
 ヴィズラは舌先で上唇をなぞり、込み上げた鋭い劣情を噛み砕いたが、限界だった。孔から指を引き抜き、射精感に打ち震えているディンの尻たぶを掴み取り、性器の根本を握り、窄まり目掛けて腰を突き出した。
「……んっ、ぐ……!」
 ほぐれた孔は硬く張り詰めた昂りをあっという間にすべて呑み込んだ。肉体関係を結んでから、何度も互いを喰らい合ってきたので、ディンの弱点はわかる。ヴィズラは緩急をつけて律動を繰り返し、甘美な刺激を求めている媚肉を貪った。ディンの肉体は何度味わっても飽きることのない、極上の馳走だ。
「おっ――ぁ、あっ、あっ……!」
 仰け反るディンが体勢を崩さないよう、うしろからしっかりと抱きかかえ、ヴィズラは腰だけを動かした。体内は狭くて温かく、ぬるぬるとしている。肉壁は四方からキツくヴィズラを締めつけてきて、気持ちがいい。浅い場所まで腰を引いて、一息に突き出すと、ヴィズラの形に慣らされた体内が締まった。
下生えをディンの尻たぶにくっつくくらい密着した。ヴィズラの猛々しい雄は、肉襞を引き潰して抉り、最奥を何度も強く叩く。喘いだディンの腹から力が抜けた一刹那、ヴィズラはさらに奥へ食い込み、窄まった結腸をブチ抜いた。
 ディンが声にならない濁った悲鳴を上げた。結腸の窪みに留まったまま短いストロークで責め立てると、ディンはまた呆気なく射精した。ヴィズラは容赦なく、自分だけが知っている窪みに、ぐぽぐぽと亀頭を食い込ませた。ディンの性器から噴き上げていた白濁は無色の体液に変わり、どっぷりと間歇的に溢れ出て、糸を引いて滴り落ちた。
 汗ばんだ肌がぶつかり合う破裂音に、互いの乱れた息遣いが重なる。ヴィズラの腹の底で、ふつふつと法悦エクスタシーが煮えてきた。
「……へばるなよ」
 ディンが快楽から逃げられないように、下腹部を抱きかかえる。貪欲にヴィズラを求めて攣縮している臓腑の隙間をみっちりと埋め、泣き所を責め立てる腰使いから、射精に向けた荒っぽいものに切り替える。ヴィズラは肉体を支配する強烈な男の本能のままに腰を揺すり、勢いよく抜き差しを繰り返した。肉と肉が激しくぶつかりあって、どちゅん、ごちゅん、と、何度も湿った音が弾ける。
「っぅ、あっ、ま――待って、くれ」
 いつものように息も絶え絶えに懇願をはじめたディンを無視した。情事の時に待てといわれて素直に待つ男などいるわけがない。
 ディンの掠れた喘ぎ声と、子種を吐き出そうとはちきれんばかりに張った睾丸が、潤滑油で濡れた尻たぶにぶつかる重々しい水音が、ヘルメット越しにヴィズラの耳を楽しませた。
 もっと泣かせてやろうと、ディンの下腹部に回していた手を胸元までせり上げ、勃起した乳首を捏ねくり回す。
「や……やめろ、それっ……ぐっ……あっ、ぁっ」
 喉の奥から声を絞り出し、打ちのめされたディンは扇情的で、たまらなくそそられる……。胸部への甘ったるい刺激を受けて、体内がいっそう強く締まり、ヴィズラの中で強烈な射精感が一気に沸騰した。
「射精(だ)すぞ」
 ふっと大きく息を吐き、結腸の滑らかな谷間に亀頭を押し付けて、煮詰まった欲望を吐き出した。腕の中で、ディンの肉体が不規則に、小刻みに拘攣している。
 ゆっくりと腰を引いて孔から抜け出ると、ディンは前のめりになり、両手を突いた。マントが捲れ、尻が丸見えだ。内側の粘膜を晒してひくついている孔から、吐き出したばかりの濃い精液が溢流して、内腿を伝い落ちていく。そんなそそる光景を見下ろしていると、ヴィズラの男の本能は勢いを取り戻した。
「悪いが、もう少し付き合ってくれ」
「……胸は、触るなよ」
 ディンは首を巡らせて低い声でいった。まるで小動物の威嚇のようだった。
「なんだ、感じたか?」
 問い掛けにディンは答えなかった。実にわかりやすい。忍び笑いを漏らして、ヴィズラは再び、魅惑的なラインを描くディンの腰を掴んだ。

 コフィン・ベッドには、男ふたり分の体温で蒸していた。
ディンは震える手を伸ばし、ヴィズラの胸に触れ、指先で上から下に撫でた。アーマー越しに、筋肉で隆起した逞しく厚い胸の内側から生き生きとした鼓動が伝わってくるようだった。最近はこんな風に触れ合うことも増えた。まるで愛情によって紡がれる愛撫のようだが、性的興奮が膨らむからだと、ディンは自分に言い聞かせている。
 上半身を屈めたヴィズラのヘルメットが近付いてきて、ディンの視界が覆われた。ちょうど唇の辺りがぶつかって、かつり、と硬い音が跳ねた。吐息が重なる距離感。ヴィズラの腰の動きに合わせてヘルメットは何度もぶつかる。
 ディンはヴィズラの太い首のうしろに腕を回して抱き寄せた。
「……がっつきすぎだ」
 ディンの息も絶え絶えの囁きに、ヴィズラはフンと鼻を鳴らした。「お前もな」
 ヴィズラは首のうしろにあった左手を剥がすと、指を互い違いに組んで掬い取り、そのままディンのヘルメットの横に縫い付けた。
短いストロークが奥を突く長いものへと変わる。
「っ……んっ、ん……あっ」
「奥、好きだろ」
 男の本能が抜け落ちそうなくらい腰が引かれる。肉襞を逆撫でして退いた熱い滾りは、一息でディンの深い場所まで到達した。ヴィズラしか知らない最奥にある臓腑の窄まりを貫かれ、ディンは慄いた。強烈な痺れが全身を支配する。
 ヴィズラの腰使いは、徐々に内臓を引き潰すものへと変じていく。沸騰していたどろどろした法悦エクスタシーがせり上がってきて、ディンの脳髄に肉薄する。
「……ぉ、奥、ぁ、だめだっ、やめ、ろ」
 強烈な快感に襲われ、言葉は途切れ、意味を成さない震え声になった。
「…………! あ、あ、……っ……!」
 快楽は、受け容れすぎると苦痛に変わる。ディンは苦しみから逃れようと、押さえ付けられている左手に力を込め、ヴィズラの手を強く握った。伸びていたヴィズラの指が曲がり、互い違いに交わる指がしっかりと合わさった。
 どちゅん、と結合部から一際重たい音がして、ディンの脳髄に迫っていた形のない法悦エクスタシーが弾けて全身を巡った。目の前で強い光を見た時のように視界が真っ白になった。生理的な涙が湧いて、睫毛に絡む。瞬きを繰り返すと、瞼の裏で赤や緑の影が舞った。
「~~~~~~っ!」
 総身の筋肉が硬直と弛緩を繰り返す。一気に腰回りが熱くなった。失禁したのかと思って慌てて下半身を見ると、腹の上で揺れていた男の象徴から、勢いのない体液が押し出されるように溢れ出ていた。
「……よく締まるな」ヴィズラは息を弾ませ、腰を止めた。「俺も限界だ」
 繋がっていた手が離れる。ヴィズラはディンの膝裏を両方掴み取ると、身を乗り出し、のしかかってきた。腰の動きが射精に向けて突くだけの荒々しいものに切り替わる。
「あ、ぐっ――んっ」
 極致感に浸る間もなく揺さぶられた。奥を何度も抉るように叩かれて、意識を手放さないようにするのに必死だった。快楽は怒涛となって押し寄せて、容赦なくディンを襲う。ディンはヴィズラの腋の下から腕を回し、肩甲骨のくぼみに指を引っ掛けてしがみついた。重々しいピストンは止まらない。粘っこい音がディンの微かな喘ぎ声に被さる。
「……っ、は——射精(で)るっ……」
 言い終わる前に、熱いものが体内に注がれる感覚がして、ディンは眩暈を覚えた。
 身体の大きいヴィズラの射精は長い。精液をすべてディンの中に吐き出してから、ヴィズラはゆっくりと離れた。拡張した孔から、射精を終えて勢いをなくした性器がまろび出る。萎えたといえども、規格外の大きさだ。
 互いに息が乱れていた。ディンは折り曲げた足を開いたまま放心していた。もう何度も交わっているのに、ヴィズラとの性交渉が単調なものではないのは、身体の相性がいいのだろうか。いつも泣き所ばかり責められる。
「大丈夫か?」
「……ああ。問題ない」
 所在なく手を腹に置いてディンは言った。片手を突いて起き上がろうとしたが、腰がだるい。かろうじて下着を上げる。
 少し休んでから去るか、さっさとシャワーを浴びに行くか考えあぐねていると、首を巡らせたヴィズラとバイザー越しに視線が合った――気がした。
 片手が伸びてきた。一拍置いて、差し出された手を取り、身体を起こす。手はすぐに離さなかった。否、なぜか、離せなかった。見詰め合うと、夢心地に似た気持ちに襲われた。
「……ありがとう」
 ややあって手を離す。ヴィズラはなにもいわなかった。
 まだ熱っぽい腹を摩って、ディンは溜息をついた。
 腰はだるいが、すっきりしていた。今夜はよく眠れそうだ。




Starlit

 グラヴィズ星系にある宇宙ステーションでアーマラーとヴィズラと再会した時、ディンは心底安堵した。ネヴァロで帝国軍の残党から逃れたのは彼らだけだと知って胸が痛んだが、再会は喜ばしいものだった。マンダロリアンの新たな隠れ家となったこの場所から、また一歩ずつ進んでいくのだ。マンダロリアンは如何なる苦境にも決して屈しない。
 ヴィズラがバクタ・スプレーで手当てしてくれた足の傷から痛みがだんだんと引いてきて、ディンはようやく腰掛けていた階段から立ち上がった。まだ痛むが、いつまでも休んでいられない。手伝えることは手伝いたい。
 アーマラーにできることはあるか訊ねると、少し休むよういわれた。もう平気だと返したが、平静に、いつもの如く凛とした声音で「傷付いた者には休息が必要だ」と諭されたので、素直に彼女の心遣いに甘えることにした。ここ最近仕事続きで、身体を休めていなかった。弱っている時は、判断を誤ることもある。それに、彼女たちの傍で過ごすのはずいぶん久し振りだ。束の間の安息に浸るのもいいだろう。
 来た道を戻っていると、さっきはいなかったヴィズラを見付けた。広い背中を見詰めて歩み寄ると、彼は振り向かずに「傷はいいのか」いった。
「ああ。さっきはありがとう。世話を掛けた」
 隣に立つと、果てしない宙が見えた。あまねく散らばる星々の瞬きは頼りない。
「しばらくここにいるのか」
「ああ。そうしようと思う。俺にできることは、やらせてほしい」
「やることならいくらでもある。炉の準備も必要だ」
 遠くで星が煌めいた。一等星だろうか。ディンとヴィズラは、互いに黙った。ディンは俯いて、ふっと肩の力を抜いた。
「また会えてよかった」
「そうだな」
 ヘルメットを巡らせ、頭ひとつ分背の高いヴィズラを見上げる。バイザー越しに視線がぶつかった。ヴィズラの眼差しには、熱がこもっている。
「……ジャリン」
 名前を呼ばれた途端に、胸に湧いていた安心感は腹の底まで落ちて粉々に砕け散った。飛び散った安心感の断片は、一気に盛った劣情の炎に呑み込まれて灰になった。そっと腰から抱き寄せられた。胸当てが触れ合って、硬い音が跳ねた。
「……するか?」
 ヘルメットの聴覚センサーを揺さぶる熱烈な誘いに、ディンは歯を食い縛った。互いに欲情している……。
 ディンは返事をする代わりに、腰にあるヴィズラの手に自身の掌を被せて、指先を握った。
 宇宙ステーションの地下の最下層、狭い鋼鉄の通路に張り巡る太い排熱管と排熱管の間にふたりはいた。かろうじて男ふたりが入れる余裕しかないが、物陰になっていて、大柄なヴィズラも隠れる。
 ディンは排熱管に手を突いて、背後に立つヴィズラに身を委ねた。下半身のジッパーと下着が下ろされ、股間と尻が露出する。大きな手がまだ萎えたままの性器を包み込み、ゆっくりと上下しはじめる。潤滑油がないので、革レザーの手袋グローブと擦れて少し痛かったが、先走りが滲み出てくると、滑りはよくなり、快感が生まれた。根本の膨らみも揉みしだかれた。男同士なのだから、どこが気持ちいいかはわかるだろう。ましてや、ヴィズラとは何度も身体を重ねている。
 ヘルメットの肩口にヴィズラの顎が載り、官能で湿った息遣いを聴覚センサーに感じた。ディンは片手を後ろ手に回し、ヴィズラの下半身をまさぐり、股間部分に被さった装甲を外してやった。装甲は排熱管の突き出している部分に置いた。再び手を這わせると、そこはもう硬くなっていて、盛り上がっていた。ディンは思わず身震いした。この規格外の質量に腹を拓かれる……。
「……ん」
 ゆるゆると性器を扱いていた手が速くなる。指の輪は強弱をつけて張り詰めた亀頭の下から根元まで滑っては戻る。傘下の括れを強く握られると、甘美な痺れが下腹部に広がった。鈴口を親指の腹で詰られ、肉の幹の裏側をくすぐられ、強く撫で摩られ——ディンは果てた。びゅくびゅくと噴き上がった白濁を、ヴィズラは受け止めた。
 ふーっと息を吐き出す。吐精してすっきりはしたが、まだ物足りない。早く繋がってしまいたかった。排熱管に手を突いたまま前屈みになって腰を突き出すと、剥き出しになった尻をヴィズラは鷲掴みにしてきた。彼は肉付きでも堪能するように尻を何度か軽く引っ叩いてきた。かと思えば、撫で摩ってきた。
「俺の尻が恋しかったのか?」
 ディンが溜息の代わりにつまらない冗談を零すと、ヴィズラは「俺以外に抱かれたか?」低い声でいった。
「まさか。お前だけに決まってるだろう」
 他の男に身体を許す――不快感が湧いて、ディンは顔をしかめた。
「お前だから……抱かれている」
お前だけだと結んだ。ヴィズラは黙っている。ややあって、精液に塗れた指が交わるための窄まりに潜り込んだ。括約筋は久し振りに迎えたヴィズラの指を拒んだが、抵抗は呆気ないものだった。
「……ん、っぅ」
 ヴィズラの指は肉の嵌合を割り、ディンの腹を拓いていく。ぐちっ、と水っぽい音がした。体内の深い場所に指の存在を感じて、足から力が抜けそうになった。ヴィズラは時間を掛けて孔をほぐしていった。一本だった指は三本に増え、根本まで挿入できるまでになる頃には、色欲の糸にがんじがらめにされたディンは限界だった。
「挿入(いれ)て、くれ」
「こっち向けるか?」
「……ああ」
 ディンはのろのろと振り返った。いつの間にか前を寛げていたヴィズラの男の象徴が、太い血管を浮かせて屹立している。ふてぶてしいほどの大きさのそれに、ディンはごくりと喉を鳴らした。
「座れ。俺が抱きかかえる」
 促さるままに、ディンが背後の突起に浅く腰を掛けると、膝裏を掴み取られた。折り曲げた両足を開く。下半身は丸見えだが、互いに羞恥心はない。
 ヴィズラを求めてひくつく孔に亀頭が押し当てられたが、すぐには挿入されなかった。まるでキスでもするように、ヴィズラは尖端で濡れそぼつ桃色の粘膜をつついたり、離れたりした。マーキングのような行為を、ヴィズラは好む。
「早く、挿入(いれ)ろ」
 もどかしくて、ディンはヴィズラの首に腕を引っ掛けた。ぬらぬらと濡れた孔に硬いものが押し当てられ――一息に押し込まれた。張り詰めた亀頭が肉の門を突破する。猛々しい肉杭は半ばまで埋まった。待ち侘びた快感に、ディンは脱力感から気の抜けた声を漏らした。
 膝裏にヴィズラの逞しい両腕が回り、両足をハの字に開いた体勢で抱き上げられた。体勢と、ディン自身の自重で、繋がった部分が密着するのは一瞬だった。
「んおっ、ぁ……!」
 目の前がちかちかと明滅して、反ったディンの喉から歓喜の声が絞り出された。
「なんだ、俺のナニが恋しかったのか?」
「……っ、そんなわけ、あるかっ……」
 楽し気なヴィズラの胸をどついてやりたかったが、身体に力が入らなかった。
 ディンは足を大きく開いたまま、排熱管とヴィズラの間に挟まれた。ディンを軽々抱き上げたまま、ヴィズラは「動くぞ」囁いて、腰をくねらせた。肉襞を轢き潰し、体内を往復するヴィズラの存在を骨盤の内側に感じて、ディンは慄いた。
「ぁ、あっ、っ……んっ」
 律動に合わせてディンの腹から嬌声が押し上げられる。ヘルメットの額同士が引き合って重なり、聞き慣れた無機な音が跳ねた。残響は官能と混ざり合って、情欲を激しく煽った。本能を喰らい合う今この瞬間、宇宙にはディンとヴィズラしかいなかった。生きている。生きていていい。生きなければならない。
「お前に、会いたかった」
 ディンは息も絶え絶えになりながら、胸に秘めていた想いを吐き出し、ヴィズラの首のうしろで重ねた手に力を込めた。ヘルメットのバイザー越しに視線が絡まって、逸らせなくなる。
「……俺もだ」
 ヴィズラの声には熱がこもっていた。それで十分だった。
「ジャリン」
「……パズ」
 ヴィズラの腰が止まって、触れ合ったヘルメットが――唇の辺り――かつりと鳴る。ディンは衝動的に両足でヴィズラの腰を挟み込んだ。「激しく、してくれ」
「あとで立てなくなっても知らないぞ」
「構わない」
「後悔するなよ」
 ヴィズラのヘルメットが離れていく。彼はディンの足をさらに大きく開かせると、ゆっくりと腰を引いた。体内に留まっていたものが抜け落ちそうなところまで引くと、神経が集中している孔の縁を擦り上げられた。捏ねるように動いていたそれは、一気に奥に滑り込んできた。短いストロークで体内を突かれ、ディンは頭を反らした。肉と肉がぶつかる生々しい音が聴覚センサーを震わせる。 
「おっ、あ、あ、あっ」
 泣き所を責め立てる腰使いだった。臓腑の隙間をみっちりと埋めるヴィズラの男の本能は、確実にディンの弱い場所を突いてくる。火照った身体を巡る快楽の怒涛に呑まれそうになりながら、ディンは無我夢中でヴィズラにしがみついた。雄々しい分厚い肉体は、匂い立つほどの官能に満ちている。
「……ここ、好きだろ?」
 わざと腰を止めてから、焦らすように粘膜の隘路をじわじわと突き進み、ヴィズラは、自身しか知らない最奥に到達した。突破されてはいけない臓腑の窄まりに灼熱が食い込み――ブチ抜かれた一刹那、ディンの総身が強張り、喉から濁った声が出た。窄まりに亀頭を食い込ませ、ヴィズラは腰をくねらせて、執拗に肉壁を叩いてくる。
「……っ! ぁ、やめ――やめろ、だめだっ、あっ、あ、~~~~っ!」
「本当にやめてほしいのか?」
「は、あ、あっ、~~~~っ、……!」
 目を開けているのに、ディンの目の前は真っ白になった。赤や緑の影が素早く視界を横切る。生理的な涙が瞬発的に湧き、鼻水が垂れ、顎に力が入らなかった。緩く勃起していた性器から、どろどろと勢いのない体液が間歇的に漏れ出ていることにすら気付かなかった。
「気をやるなよ」
 答えられないでいるディンを抱え直し、ヴィズラは腰だけを動かした。
「あ、いっ……イった、ばかりだっ、よせ……!」
「激しくしろといったのはお前だ」
「っん、ん……、あっ」
 極致感の余韻に浸る間もなく責め立てられ、快楽に身体を支配された。気持ちがいいが、快楽は受け容れすぎると苦痛に変わる。甘ったるい苦痛から逃れたくて、ディンは必死にヴィズラに抱きついた。形のない法悦が渦を巻いて、腹の底から鳩尾のあたりまで浮上する。眼球の裏で火花が散っている……。
「……は、あ」
 腹に載った萎えている自身から、また体液が溢れていた。何度目かの沸点に、ディンは呼吸をするだけで精一杯だった。
 円を描くように律動していたヴィズラの腰使いが、ディンの最奥を突く動きに変じた。射精に向けた荒々しい動きだが、呼吸を乱して腰を振っているヴィズラを見ると、ディンの中に一握の陶酔感が湧く。この男の本能に任せた淫らな姿を見られるのは、己との密約にも似た男同士の交わりでだけだ……。
「……射精(で)るっ……」
 ヴィズラの切羽詰まった声が弾け、体内で熱いものが流動する。ディンは腹の力を抜いた。巨躯であるヴィズラの射精は長い。
「まだ勃つだろう?」
 ディンは体内に留まっていたヴィズラが去る前に訊いた。
「俺が一度でへばったことがあったか?」
 孔から抜け落ちた男の本能は、まだ勢い付いている。
 ディンは腰掛けていた突起から降りて、ヴィズラに背を向け、マントを捲り、腰を突き出した。中に出された真っ白な快楽の名残が溢流して内腿を伝い落ちていく感覚がした。
 ヴィズラの手が腹に回った。人々の営みが粛々と展開する宇宙の片隅で、求め合い、互いを貪り合った。


 事後、互いに何事もなかったかのようにけろりとして、アーマラーの作業場を整えるために、炉を設置した。
 あと少しで完成するという時に、ディンは俯きがちに溜息をついた。グローグーを仲間の元へ返してから、溜息が増えた気がする。仲間の元へ返すまでは、親代わりとなる――マンダロリアンとしての責任を果たし、ひとりに戻っただけなのに、ふとした時に、グローグーのことを考えてしまうのだ。
「なにを考えている」
 ディンは顔を上げた。ヴィズラが鷹揚と歩み寄ってきた。
「ネヴァロを出てから、色々あった」
こうして話をしていると、再び生きて会えたことに対する喜びが胸に湧く。久しぶりに嬉しいと感じている自分自身に、ディンは驚いた。
「孤児を仲間の元へ返して、寂しくなったか?」
「……そうじゃない」
 強く言い返したつもりだったが、声は小さなものだった。
「しおらしいなんて、お前らしくない。孤児と別れてから、賞金稼ぎになりたての頃みたいに、無茶してたんだろ」
 ディンは首を巡らせてヴィズラを見た。ヘルメットのバイザー越しに視線が交わったが、なにもいえなかった。ヴィズラは、ディン自身がごまかしてきた心境の変化に気付いている。他者の心の機微には鈍感そうに見えるのに。
「……わかるか?」
「お前のことは子供の頃から知っているんだ。いやでもわかる。お前は昔から変わらないからな」
「そうか?」
「そうだ」
 ディンは思わず苦笑いした。子供の頃から馴染みであるヴィズラにそう言われると、反論ができない。子供の頃に形成された性格や価値観、気質の根幹となる部分は、この歳になっても変わらないのは事実だ。ディンだって、ヴィズラの性分はわかっている。
 沈黙のあと、ディンは胸の内で暴れている感情を言葉にするために目を閉じた。瞼の裏に浮かぶのは、グローグーだ。
「あの子に……グローグーに会いたいんだ」
「会いに行ってやれ」
「……いけない。あの子は仲間の元にいる」
 何度も己に言い聞かせてきたことを口にして、ディンは俯いた。心を殺すたびに、胸の奥がぎりぎりと軋む。
「だからなんだ。お前は父親だろう。親が子供に会ってなにが悪い。子供は親を恋しがる」
 ディンは歯を食い縛った。グローグーも寂しがっているだろうか。仲間の元で元気でやっているだろうか。いいや、考えてはいけない。安全な場所で、頑張っているだろうから……。
「……だめだ。会いに行けない。あいつは……きっと、大丈夫だ」
 喉から絞り出すようにいう。ヴィズラが黙った。
「ジャリン」
 長い沈黙のあと、静かな声で名を呼ばれた。おずおずと顔を上げる。目の前が涙で水っぽく歪んでいることに気付いて、ディンは顔をしかめた。
「子供には、親が必要なんだよ。それをお前が一番わかってるんじゃないのか?」
「…………」
 優しかった父の別れ際の顔が記憶の海から浮上する。大好きだった。離れたくなかった。師であり、養父であった誇り高い男の背中が浮かぶ。かけがえのない人だった。傍にいてほしかった。ふたりの父のことを忘れることは、この先も絶対にない……。
「グローグーに、会いに行く」
「そうしてやれ。孤児も喜ぶ」
「あの子に贈り物がしたい。アーマラーに作ってもらう」
 踵を返そうとして――よろめいた。
「落ち着けよ。バクタ・スプレーが効くまで待て」
 ヴィズラの制止に、ディンは微苦笑した。足はまだ鈍く痛んでいるが、涙は、引いていた。


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パズディン 次に書きたいやつ

「話がある」
 見張りをしているパズ・ヴィズラの前に立ちはだかったディン・ジャリンがそういった時、燈の欠けた下水道の通路に緊張が走った。ヴィズラと同じく巡回をしていた同胞たちは顔を見合わせ、誰もかれもがヘルメットの下で剣呑と眉を寄せ、胸の内で呟いた。「また喧嘩か」
「なんだ。言ってみろ」
 威圧的なヴィズラに対し、ディンは辺りを見回してから、「ふたりきりで話がしたい」平静といった。
「この場で言え」
 会話を聞いている同胞たちを一瞥して、ディンは溜息をついた。
「やりたいことがある。お前に頼みたい。ちょっとした――鍛錬だ」
「それなら付き合ってやる」
 広い場所へ向けて歩き出したふたりに続いて、興味を持ったらしい同胞たちがついてくる。住居スペースから離れた場所には、拓けた場所があるのだ。
 数名で列をなし、男たちは狭い通路を歩き続けた。いくつもの角を折れて、組み込まれた鉄骨が剥き出しの場所に辿り着くと、ディンは持っていたスタン・ブラスターをヴィズラに投げ渡した。これは相手を殺さずに神経を麻痺させて無力化させるためのものだ。
「この間の仕事でそいつに痛い目に遭わされた」壁の方へ歩きながらディンは続けた。「数発なら喰らっても耐えられるが、耐えても隙ができる。素早く体勢を立て直せるようにしないとまずい」
「そのために、これでお前を撃てと?」
「そうだ。少しでも耐えられるようにしたい」
 マントの裾を翻したディンと数メートル距離を置いて向かい合うヴィズラ……見物にきた同胞たちは、固唾を飲んで見守った。元来スタン・ブラスターが効きにくい種族もいるが、マンダロリアンは別だ。アーマーも電撃を受け流すことはできない。耐えられたとしても、精々一発や二発だ。継続的に喰らえば気絶する。ディンの言う通り、そうなる前に態勢を立て直して、敵対者を始末する必要がある……。閉じる

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パズディン本の表紙を勢いで作ったので、あとは中身頑張って作ります!
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原稿ではないけどパズディン書きかけのやつ。こういう書き出しで書きたいという話。

 ディン・ジャリンは、ネヴァロ・シティの地下にある下水道でひっそりと暮らす同胞たちの元を積極的に訪うようにしている。孤児たちを養えるように資金を提供する責任があるし、アーマラーに防具のメンテナンスをしてもらう必要もあるからだ。
そしてもうひとつ、決して口にはできない目的がある。それは同胞であるパズ・ヴィズラに会うためだ。彼とは、肉体関係を持っている。
以前寝る場所を提供してくれたヴィズラの寝床で、ちょっとした勘違いで自慰の邪魔をしてしまって、劣情を発散できなかった彼に「抱かせてほしい」と言われ、そのまま承諾したのがきっかけだった。それっきりで終われば一夜の過ちとなったかもしれないが、互いにパートナーがいないこともあり、後日なんとなくまたそんな雰囲気になって、身体を許した。こうして関係は続き、密約にも似た行為に耽るようになった。
ヴィズラとの性交渉は、性欲を発散するためのものであって、愛情は間にはない。肉体だけの関係であるから、色事でよくあるすったもんだもなければ、面倒な駆け引きもない。楽でいい。
その夜も、ディンはヴィズラのコフィン・ベッドの中にいた。
ランプの仄燈に照らされたコフィン・ベッドにこもるのは、男ふたり分の湿った息遣いと、汗ばんで火照った身体から滲み出る体臭と、盪くした果実が放つ芳香のような、噎せ返るほどの官能だった。閉じる

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