食事を終えて焚火の前に戻ると、グローグーがラグナーと火を挟んで向かい合っていた。ふたりの傍には空の食器があった。
「グローグーって、小さいのにたくさん食べるんだね」ディンを見て、ラグナーは膝を抱え直していった。「嫌いなものはないの?」
「この子はなんでも食べる」ディンはグローグーの隣に腰を下ろした。「子供はたくさん食べた方がいい」
「父さんもよくそういう。僕は野菜が好きじゃないのに、好き嫌いせず食えっていう」
「育ち盛りなんだ。それに、栄養を摂った方が大きくなれる」
「父さんと同じこと言うんだね」
「あいつも子供の頃はよく食べた」
「そうなの?」ラグナーは首を傾げた。声音には、好奇心が滲み出ている。「好き嫌いもしなかった?」
「野菜も食べたし、狩りや釣りをしては、よく一緒に採ったものを食べた」
「狩りをしたの?」自分の父親の子供の頃の話に興味を持ったラグナーは、背筋を伸ばして、「父さんって、子供の時から大きかった? 強かった?」
「ああ。俺よりも少し背が高くて、身体もがっしりしていた。訓練じゃ、負け知らずだった」
「僕も父さんみたいになれるかな?」
「なれるさ。好き嫌いせず、たくさん食べればな」
「じゃあ、僕もいっぱい食べる! あ……野菜も……ちゃんと食べる……」
ラグナーの声は、最後だけ小さかった。
「いいなあ。僕も父さんと狩りに行きたいな」
切望が火に照らされる。グローグーがこてんと横になった。満腹になって、眠気がきたのだろう。
食事を終えて焚火の前に戻ると、グローグーとヴィズラが火を挟んで向かい合っていた。グローグーの傍には空の食器があった。
「お前のところの孤児は小さいのによく食べるな」ディンを見て、ヴィズラは身じろぎして岩に座り直した。「好き嫌いもない」
「この子はなんでも食べる」ディンはグローグーの隣に腰を下ろした。「子供はたくさん食べた方がいい」
前にもこんなやりとりをしたことがあるような気がして、ディンは一瞬考えた。気のせいか? いや、絶対にこんな会話をしたことがある……。
「そうだな。子供はたらふく飯を食うべきだ」
そういえば、とヴィズラが切り出す。「最近ラグナーが野菜も食うようになった。前は残していたのに」
気のせいではなかった——ディンは以前火の前でラグナーと交わした会話を思い出した。
「あの子はお前みたいに大きくなりたがっている。好き嫌いせずたくさん食べれば大きくなれるといったんだ」
ヴィズラが小さく笑った。かすかな笑声には慈愛が滲んでいた。父親としての顔を垣間見て、ディンもつられて一刹那口の端を緩める。親はいつだって子供を思っている。
「お前と子供の頃に狩りや釣りをしたことも話した。興味津々だった。今度、連れて行ってやるといい」
「そうする。その時はお前とその子供もこい」
「俺とグローグーも?」
「子供には色んな経験をさせるべきだろう」
火が勢いを増した。ゆらゆらと揺れる赤々とした燈は、文目もわからぬ闇を照らし出す。それに、とヴィズラは語を継いだ。
「お前のところの孤児は火で炙った肉が好きなようだ。焼いたばかりの新鮮な肉を食わせてやりたい。ラグナーにもな」
炙った肉、と聞いて、グローグーの目がきらりと光る。
「グローグーも、ラグナーも喜ぶ」
ディンは胡座を掻いて、グローグーを抱き上げて、足の間に座らせた。丸っこい頭の上で、産毛が火に濡れて金色に照っている。急に愛おしくなって、ディンはグローグーの頭をそっと撫でた。子供には、健やかでいてほしい。たくさん食べて、大きくなってほしい。なんの憂いもなく、元気に育ってほしい……。
父親と師の願いが、柔らかな火に浮かび上がった。