『マンダロア』の鉱山下にある泉で沐浴を行ったことで罪を償い、再び同胞たちと過ごすようになってまだ日は浅いが、こうして仲間と過ごしていると、かつてマンダロリアンの共同体で育った日々を思い出した。そこで師や熟練の戦士たちから学んだことや得たものは、生きる上で大切なことばかりだ。独り立ちしてから長らく一匹狼でやってこられたのも、そのおかげだとディンは思っている。
孤児たちの戦闘訓練を指導したあと、夕食の時間になった。今夜のメニューは、マンダロリアンに古くから伝わる煮込み料理、ティインギラー——子供たちが食べる分には、さすがに伝統の激辛ソース、ピルジャナドはいれていないようだ——だ。
食事当番の同胞から渡された深皿から立ち込める刺激的な匂いは、懐かしいものだった。はじめて食べた時は、辛すぎて噎せたのを思い出す……。
食事をするため、各々個人の住居スペースや、人のいない場所に散っていった。ディンもグローグーを連れて、いつも食事をしている洞窟の奥に向かった。食事の時はヘルメットを外すため、ここでは焚火の前にある幅広の大きな岩を挟んで、背中を向け合って食べる。
久し振りに食べた故郷の料理は、唇を痺れさせ、胃を熱くさせた(いくらなんでもピルジャナドを入れすぎている気がする)。野菜はくたくたに煮えて、ぶつ切りの肉は脂もなく、食べ応えがあった。美味い。しかし、辛い……。食べ進めるうちに汗が噴き出てきた。
食べ終わって、ヘルメットを被ってグローグーの元へ行くと、グローグーは自分より大きな深皿を抱きかかえて、ごろごろした具をスプーンで掬って美味そうに食べていた。
「野菜もちゃんと食べるんだぞ」
まだ感覚がない唇を舌先で舐めて、ディンはふーっと息を吐き出した。
「今夜は懐かしいものを食べた」
孤児たちが眠りについた深い夜の真ん中。洞窟内でひねもす、よすがら灯る焚火の前にディンはいた。向かいにはヴィズラが岩場に腰掛けている。
「全部食えたか?」
「ああ。美味かった」
「そうか」
ヴィズラは喉の奥でくつくつと笑った。
「……なぜ笑う?」
「子供の頃は辛すぎて食いきれなかっただろう」
「…………」ディンは微苦笑した。「なんでそんなことばかり覚えているんだ、お前は」
「他にも覚えているぞ。話してやろうか?」
「勘弁してくれ」
首を振り、身じろぎして座り直す。ヴィズラがまた小さく笑った。
孤児としてマンダロリアンの共同体に迎えられた時には、ヴィズラは永遠の誓いを立てて、すでにヘルメットを被っていた。年の近い子供同士、一緒に育った。訓練をしたり、同じコフィン・ベッドで眠ったり、喧嘩だって数えきれないくらいした。取っ組み合いだってした。ダークセイバーを巡って決闘だってした。今もこうして軽口を叩き合う。長い付き合いだ。共に育った誰よりも。
目を閉じると、子供の頃の思い出が次々と瞼の裏に浮かんだ。胸の中が熱くなった。頬が緩んだ。目を開ける。とうに大人になったヴィズラが、子供みたいに小首を傾げていた。
「年を取ったな。俺もお前も」
「ハッ、思い出に浸る年寄みたいなことを言う」
「お前だからできる思い出話だ」
今度はディンが笑う番だった。
手元の枝を折って、火に投げ入れる。ぱちり、と乾いた音を立てて枝が弾けた。夜は長い。もう少しくらい、懐かしい日々を語らってもいいだろう。