Beneath the Beskar

※カントボーイネタです。成人前のふたりが合意の上で初体験をしてからずっと関係性が続いているという設定です。ヴィズラが手袋を外したり、ヘルメットをずらしてクンニする描写があります。苦手な方は読むのをオススメしません。また、避妊をしない描写がありますので、ご注意ください。

 欲情した男ふたりの息遣いに混ざるのは、ヘルメットが控えめに重なる澄んだ硬い音だ。互いに身体を押し付け合って、掠れた声で名前を呼び合う……。今夜こそこいつを抱きたい——ヴィズラは腹の底で渦巻く劣情に突き動かされて、ディンの尻を鷲掴みにした。途端に腕の中で己よりも細い身体が強張った。
「だめだ」
 明白な拒絶と同時に胸を押しやられ、降り掛けていた官能の幕が裂けていく。ヴィズラとディンが仲間以上の関係になってから、若さ故の衝動と好奇心のままに求め合って、いざ行為に及ぼうとすると、いつもこうなる。
「またか。なぜなんだ」
 ヴィズラは性的興奮を噛み殺して問う。鋭い苛立ちにも似た劣情が腰回りを重たくしていく。
「だめなんだ。できない」
「今さらなにを恐れる必要がある? 男に抱かれるのが厭なのか?」
「そうじゃない。お前なら受け容れたい」
「なら、理由を言ってみろ」
 長い鼻息をついて、ヴィズラは黙った。ディンは俯き、顔を上げ、また俯いた。らしくないが、狼狽えているようだった。なにかを恐れ、逡巡している。
「嗤わないと、約束してくれるか」
「ナニのサイズを気にしてるなら俺はなんとも思わない」
「違う。俺にはそもそもついていない」
「……どういう意味だ?」
 ヴィズラはディンの股間に視軸を落とした。ヴィズラの足の付け根では、若い性はとっくに勃起してフライトスーツを押し上げているのに、ディンのそこは平静時と変わらない。
——もしかして勃たないのか?
 少し躊躇して、ヴィズラは下から股座を掴み取るように触れた。だが、掴み取れるものはなにもなかった。ヴィズラは混乱した。
「俺にはないんだ」
 ディンはそういって、フライトスーツの前を寛げた。生地の間から抜けるように白い肌と下生えが覗く。そこには、本来男にあるものがぶら下がっていなかった。ヴィズラは剥き出しになった股座を凝視して、目を瞬かせた。生まれつき男の身体で女性器を有する者がいることは知っていたが、まさか、こいつがそうだったなんて……。
「ずっと隠してきた。お前に見られるのが怖かったんだ」
 自嘲するような口ぶりに、ヴィズラは意識をずらし、ディンを見据えた。「お前を抱きたい」

 ヴィズラ個人のスペースであるテント型のコフィン・ベッドの中は、男ふたりで入っても余裕があった。敷いてある薄っぺらいマットレスに横たわったディンの足の間に身体を割り入らせ、ヴィズラは改めてそこをまじまじと観察した。なだらかな肉の丘は褐色の下生えに覆われている。ヴィズラは女の股座をはじめて見たが、まったくの未知だった。けれど、男を受け容れる場所——つまるところ内臓だ——に、レザー手袋グローブで触れるのはよくない気がしたので、手袋グローブは両方外した。
「あまり見るな」
 折り曲げた足を開いたまま、ディンは顔を逸らした。ヴィズラはごくりと喉を鳴らして、おそるおそる女の場所に触れた。肉の門を指で押し開いてみると、薄桃色の粘膜が見えた。指の腹で割れ目をなぞる。ぬるぬるしている。女は感じるとここが濡れるということは知っている……。鎮まっていた性的興奮が鎌首を擡げる。血の巡りが速くなって、下半身に集まっていく。
 ディンに覆い被さって、ヘルメット越しにキスをしながら、上向きにした指で慎重に股座を撫で摩り、粘膜をなぞり、硬くなって突出した雌芽を嬲る。互いに性交渉の経験はない。見るのも触れるのもはじめてだ。ぎこちなく、気持ちが先走る初々しい愛撫だったが、間にある灼熱が身体を蕩けさせていった。
「あっ」
 揃えた中指と薬指で雌孔をほぐしていると、ディンは喉を反らして喘いだ。これからヴィズラを受け容れる秘裂は愛蜜でぬかるんで、粘膜と指が擦れていやらしい水音が弾み、ヴィズラの耳を楽しませる。
「パズ、んっ……、あ、もう、きて、くれ……」
「……いいのか」
「腹の奥が……、ぁ、あ、おかしく、なりそうなんだ」
 噛み締めた歯の間から鋭い息を漏らし、ディンはヴィズラの腕にしがみ付いた。
「あ、だめ、なにか——あっ、あっ……あぁっ……!」
 緩やかに掌を前後させながら、腹側に向けて指を鉤型に曲げた時、ディンの両足が痙攣した。ヴィズラの腕を掴む手が強く力んで震える。全身を硬直させて、ディンは息を詰まらせた。未熟な性が快楽に呑まれた瞬間だった。
 膨らんだ性欲が弾けて、ヴィズラは温かく湿った胎内から指を引き抜いた。下着を下ろしたまま解放している男の象徴は、痛いほどに膨らんでいる。
挿入れるぞ」
 硬くなった根元に手を添え、ヴィズラはしとどに濡れた雌孔めがけて手に負えなくなった性器を突き出した。雌孔の入口で愛蜜と先走りがぐちゃぐちゃに混ざり合う。巨大な肉色の蛇は、一息に胎内の深い場所に潜り込んでいった。
「……っ」
 男を知らない胎内は、ヴィズラをキツく包み込んだ。身体の芯から蕩けさせるような心地よさに、思わず歯を食い縛る。
「あぅ、ぐ、う……は……」
 たった今処女ではなくなったディンは、反らした手首で枕の端を掴み取っていた。鍛え上げられ、無駄な肉のついていない腹が呼吸に合わせて小さく上下する。
 はじめて味わう快感に、ヴィズラは身震いして、ディンの膝頭に手を置き、無我夢中で腰を振った。濡れた肉と肉がぶつかり合って、生々しく重たい破裂音がテント内にこもる。胎を押し上げられる動きに合わせて、ディンの嬌声がヘルメットから漏れた。大人とも子供ともいえない年頃の、活力と生気に溢れた瑞々しい男ふたりの肉体は、怒涛の快楽に溺れていた。
「……う、ぁっ、気持ち、ぃ、あ、あっ」
 覆い被さり、射精に向けて腰を振っているヴィズラの背中にディンの腕が回る。汗ばんだ肉体は隙間なく密着し、揃ってはじめてのセックスに夢中になった。互いに惹かれ合って、触れ合って、鋼鉄のキスをして、本能的に求め合っても、その先に進めないまま熱情だけが放り出された日々だった。ようやくこうしてひとつになれた。身も心も結びついた今、互いの間には歓びがあった。
「ぐっ……射精そうだっ……!」
 ヴィズラは囁いて、顎を硬くさせた。頭がぼんやりする。強く抱き合って、ディンの名を呼んで——胎内で爆発した。

 身体は男なのに、性器だけが女であることを打ち明け、情熱のままに初めて交わったあの日から、胎内はヴィズラを覚えている。互いに成熟してからも、再会する度に求め合っている。ヴィズラはパートナーではないが、最も近しい存在で、この関係性を手放したくないくらいには執着している自覚がある。
 今も、ディンはごくごく当たり前のようにヴィズラ個人のテントにいる。大口の仕事続きで、性欲を発散できていない。今夜は本能のままに貪り合いたかった。ヴィズラに預けているスキンは——ヴィズラサイズのものは探すのに苦労する——残り少ない。ヴィズラは旺盛だ。夜すがらセックスをするのに、果たして足りるだろうか?
 ぼんやりしていると、フライトスーツのジッパーが下ろされた。下着だって自分で下ろせるが、ヴィズラは律儀に脱がしてくる。
 脱がされた下着が放り出された。ヴィズラは手袋グローブを両方とも外し、股間を覆う装甲も外して、フライトスーツの前を寛げた。何度も身体を重ねているが、露出する場所はいつも決まっている。
 ヴィズラの巨躯が被さってきて、会えなかった時間を埋めるように、ヘルメットが引き合って、額がかつりと音を立てて触れ合った。バイザー越しに見詰め合って、今度は唇の位置を合わせる。鋼鉄の口付けは、劣情に火を点けた。行き場をなくしていた淫らな疼きが胎の底を熱くさせる。ヴィズラの首のうしろに手を引っ掛けて、何度もキスをした。
 太い指が秘裂に触れる感覚がして、ディンはふーっと息を吐いた。ぬちっ、と湿った音がした。女の場所は、もうすっかり濡れている。
「……興奮しているのか」
 ヴィズラの囁きに、ディンは唇を引き結んだ。
「お前と会えない間、自分で慰めていた」
「どうやって?」
「指で」
 ヴィズラの指が肉の門を割って押し入ってくる。
「満足できたか?」
「……それなりに」
「フン。そうか」
 ヴィズラが身体を起こした。指は肉の隘路を割って、自分では触れられない奥へと突き進む。敏感な胎の内側が拓かれていく感覚は、快感だった。
「……んっ」
 根元まで挿入できるほどほぐされると、指は増えた。粘着質な愛蜜は下生えが張り付くほどに溢れ、ヴィズラの指にねっとりと絡みついた。指の間では、濃く白い糸が引いている。
「あぅ……」
 指は荒っぽく胎内を掻き混ぜたかと思えば、くすぐるように小刻みに動く。緩急をつけた抜き差しは甘ったるく強烈な刺激となってディンを責め立てた。ヴィズラの身体の横に投げ出している足先が痺れてきて、形のない快楽が肉体を支配する。恥骨の辺りを規則的に叩かれ、擦られ、一気に沸点に達しそうになった。
「待て、ぅ、イく……!」
「まだイくな」
「……っ、あ、だめだ、なにか、変だ、いつもと違う」
「小便でも漏らしそうなのか?」
「そうだ——あ、あっ……!」
 ディンは咄嗟に股座を見た。いい年して失禁なんて、羞恥の極みだ。上向きの掌が、緩やかに、円を描くように動いている。
「だめだ、だめっ、あ——」
 制止の声は悲鳴じみたものへ変わり、ディンの全身が硬直した。失禁したと思った瞬間、股座から体液が噴き出た。まだ動いているヴィズラの指の動きに合わせて、まるで押し出されるようにぴゅるぴゅると放物線を描いて飛び散った。ディンの意思で止められるものではなかったが、小便をする時とは違う感覚だった。それでも、ディンはパニックになった。不随意な痙攣と体液が止まって、ヴィズラの手も止まった。
「潮噴くくらいよかったか」
 ヴィズラは雌孔から指を引き抜いた。掌はずぶ濡れだった。
「……潮ってなんだ」
「俺も詳しくは知らない。男の射精と同じだろう。小便じゃないのはたしかだ。気にするな」
はじめての経験に、ディンは深呼吸した。快楽とは底なしだ。目の奥が熱い。
「うしろを向いて尻を上げろ」
「お前に背中を見せろっていうのか」
 ディンは言い返した。誰かに背中を向けるのは、戦士として好ましくない。たとえそれが情事の最中であっても。とはいえ、獣の交尾よろしくまぐわったこともある。……あまり回数はないが。
「いいから、うしろを向け」
 顔を顰めてから、ディンは言われるがままに四つん這いになった。肘をついて枕に突っ伏し、腰を反らす。ヴィズラから見たら、蜜を滴らせる熟れたそこが丸見えだろう。
「振り向くなよ」
 警戒心を含んだ低い声だった。尻を片方鷲掴みにされ、ややあって、官能の芳香を放つ花弁に、指でも、性器でもないものが触れた。
 ほめく雌芽を——舐められた。舌は膨らんだ芽を転がすようにくねった。
「——あっ」
 ヴィズラの舌は秘裂をぬるぬると滑り、かと思えば、淫猥な音をわざと立てて愛蜜を啜ってきた。
「そんなところ……あ、ぅ、舐めるな」
 枕にヘルメットを埋めて叫ぶが、身体は与えられる刺激を受け容れていた。気持ちがいい。
「っ……!」
 高々と上げた腰が自然と動いてしまう。舌と唇でめちゃくちゃに愛撫され、意識が蕩けていく。舌だけでなく、再び指に雌孔をえぐられ、ぬかるみはさらに粘度を増した。胎の奥が熱い。子宮口が、ヴィズラを求めて緩やかに降りてきている。
「……パズ、……んっ、もう、挿入れて、くれっ……!」
 二度目の沸点に達した時、ディンは懇願した。一刻も早く、胎の中を満たしてほしかった。
挿入れてやる」
 ヴィズラの湿った吐息を股座に感じた。ヴィズラがスキンを装着している間ももどかしく感じた。柔い秘裂を堪能するように、男の本能が押し当てられたり、離れたりする。
「パズ、早くっ……」
 ディンはまた懇願した。限界だった。
 張り詰めた傘が雌孔を押し広げる微かな圧迫感のあと、待ち侘びた熱を感じた。ヴィズラの猛々しい肉杭は、深々とディンを貫いた。
「……キツいな。俺のナニを喰いちぎる気か?」
 すぐに抽迭がはじまった。
「あ、うぁっ……ぐっ……!」
 男同士の交わりであって、男女の営みのようでもあった。処女をヴィズラに捧げた日から長い月日が経ち、熟れた女の部分はすっかりヴィズラの形に慣らされてしまった。ヴィズラしか知らない最奥が、きゅうと締まるように切なく疼く。
 奥が泣き所であることを知られている。長いストロークで、入口から最奥まで一息に突かれ、喉から声が押し出される。法悦エクスタシーが脊髄を伝い上がり、神経を削り落としていく。
 摩擦は続き、ヴィズラが一度目の射精を終え、二つ目のスキンの封が切られた。口を縛って適当に放られたスキンの先端には、たっぷりと子種が溜まっていた。あれを直接胎に注がれていたら、間違いなく孕んでいただろう……。
 スキンがなかったら、孕む——ぞくりとして、喉が鳴る。その間も律動は続き、脊髄に絡まっていた法悦エクスタシーが脳髄にせり上がってきて、目の前がちかちかと明滅した。
「あっ! っ、~~~~~~!」
 総身が言うことを聞かなくなる。全身の筋肉が硬直して、弛緩して、また硬直した。イっているのに、ヴィズラの腰が止まることはない。極致感オルガスムスの名残がじわじわと全身に心地よく広がっていく。散々イかされて、ぐったりしている間もされるがままだった。底なしの快楽に、息も絶え絶えになった。胎内に留まっているヴィズラが弾け、二個目のスキンも使い物にならなくなった。
「スキンがなかったら、何度孕んでいたかわからないな」
 のろのろと仰向けになって、まだ勃起している一物を見据えてぽつりと呟く。セックスをするのは久し振りだ。ヴィズラも溜まっているのだろう。
 膝裏を掴み取られた。折り曲げて引き寄せていた足が大きく開かれ、太腿のあわいにヴィズラの巨躯が割り入り、ふてぶてしいまでの大きさの性器が肉の丘に載る。重量感があった。先端は、臍の位置を優に超えていた。
「スキンを着けろ」
「今ので最後だ」
「……俺はまだ物足りないんだが」
「なら、このままするか」
 発情した雄が雌にするマーキングのように、尖端が濡れそぼつ割れ目をなぞった。吸い付いた媚肉がちゅっと音を立てた。拒絶しなくてはならないのに、拒絶できなかった。思わず身震いした。スキンをしているから妊娠の確率は下がる……なのに、本能は孕まされることを望んでいる。細胞の一片までもがヴィズラを欲している……。
 濃い影が被さってきて——繋がった。強く抑え付けられ、ヴィズラの腹の横から足だけが飛び出す。尻が持ち上がり、上から押し潰すようなピストンを叩き込まれた。臓腑が圧迫されて、息がうまくできない。それでも、たまらなく気持ちがいい。
「……ジャリン……」
 熱っぽく名前を呼ばれ、降りてきている子宮口を突き上げられた。
「お”っ……」
 濁った声がヘルメットから漏れた。結合部分では、どちゅん、ばちゅんと激しく肉と肉が鳴っている。
「あっ、あ——ん”おっ」
 ヴィズラの腰だけが動いている。突き上げる動きに合わせて、みっともない声が出た。肉壁は子種を搾り取ろうと蠢き、子宮口は子種を迎え入れようとさらに下がってきている。
「ぅ、イくっ、あっ、あ——イぐっ……!」
「っ、締め付けるな、俺まで射精そうになる」
 孕ませるという獣性のような本能のままに、ヴィズラは腰を揺すり続ける。子宮口めがけて射精するため、腰使いは徐々に荒いものになっていく。
「お前の胎内なかに射精すぞ」
 ヘルメットの聴覚センサーの傍で囁かれた。排卵すれば、胎の中で、たったひとつの卵をかけて生存競争が行われる。受精すれば孕む。
「……っ、あ、あっ、ん、~~~~~~~っ!」
 頭の中が真っ白になって、ディンは何度目かの絶頂を迎えた。
 胎の奥で雄がどくどくと脈打っている。間歇的に、たっぷりと精液が注がれている。子宮口は、一滴も余さず飲み干した。
 生臭い性のにおいと、汗ばんだ身体から立ち上る男ふたりの体臭がテントの中にこもっている。雄と雌の交わりを終えて、倦怠感が押し寄せてきた。
 ヴィズラが離れて、隣に横たわった。揃って息が整うまで動かなかった。胎内に出された子種が溢流して、潤んだ股座をいっそう濡らす。生身のまま繋がったのは、初体験の時以来だ。
 ディンは重たい身体で寝返りを打った。視界の端に、投げ出された下着が映る。あれを取るのは、しばらくあとになりそうだ。もしかしたら、朝になるかもしれない。今はただ、ヴィズラの隣で眠ってしまいたかった。