Tender Spot

「話がある」
 見張りをしているパズ・ヴィズラの前に立ちはだかったディン・ジャリンがそういった時、燈の欠けた下水道の通路に緊張が走った。ヴィズラと同じく巡回をしていた同胞たちは顔を見合わせ、誰もかれもがヘルメットの下で剣呑と眉を寄せ、胸の内で呟いた。「また喧嘩か」
「なんだ。言ってみろ」
 威圧的なヴィズラに対し、ディンは辺りを見回してから、「ふたりきりで話がしたい」平静といった。
「この場で言え」
 会話を聞いている同胞たちを一瞥して、ディンは溜息をついた。
「やりたいことがある。お前に頼みたい。ちょっとした——鍛錬だ」
「それなら付き合ってやる」
 広い場所へ向けて歩き出したふたりに続いて、興味を持ったらしい同胞たちがついてくる。住居スペースから離れた場所には、拓けた場所があるのだ。
 数名で列をなし、男たちは狭い通路を歩き続けた。いくつもの角を折れて、組み込まれた鉄骨が剥き出しの場所に辿り着くと、ディンは背負っていたアンバン・スナイパー・ライフルをヴィズラに投げ渡した。これは銃身の先端に二股状の刃がついていて、相手を殺さずに神経を麻痺させて無力化させるために電気を放つことができる。
「この間の仕事で電撃で痛い目に遭わされた」壁の方へ歩きながらディンは続けた。「一、二発なら喰らっても耐えられるが、耐えても隙ができる。素早く体勢を立て直せるようにしないとまずい」
「そのために、これでお前を痺れさせろと?」
「そうだ。少しでも耐えられるようにしたい」
「ただ喰らわせるだけじゃ面白くない」
「ああ。だから、手合わせも兼ねて、だ」
 マントの裾を翻したディンと数メートル距離を置いて向かい合うヴィズラ……見物にきた同胞たちは、固唾を飲んで見守った。元来電撃が効きにくい種族もいるが、マンダロリアンは別だ。アーマーも衝撃を受け流すことはできない。耐えられたとしても、精々短時間だ。継続的に喰らえば気絶する。ディンの言う通り、そうなる前に態勢を立て直して、敵対者を始末する必要がある……。
 ディンは右足のホルスターからバイブロナイフを抜いて駆け出し、ヴィズラが銃身をディンに向けた。鋭い刃は電気を帯びて蒼白く発光しはじめる。ディンは二度素早く攻撃を躱したが、電気を帯びた尖先が脇腹を掠めた時、苦し気な唸り声を上げた。バイブロナイフの柄が攻撃を弾く音が反響し、どちらも譲らない攻防が続く。足に電撃を受けた一瞬、隙ができ、ディンは腹に突きを一撃喰らった。バチッと電気が弾ける音がして、ディンの身体が後方に吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
 ディンはすぐに起き上がろうとしたが、身体に力が入らないようだった。崩れ落ちる彼を見て、同胞のひとりが「手当てをした方がいいんじゃないか」と声を上げると、ヴィズラはライフルを下ろした。
「世話の焼ける奴だな」ヴィズラはディンの方へ顔を向けながら、ライフルを同胞に投げ渡し、溜息をついた。「俺のところでしばらく休ませる」
 彼は鷹揚とディンの傍でしゃがみこみ、衰弱しているディンを横抱きにして立ち上がった。
「……すまない」
 消え入るような弱々しい声に、ヴィズラはまた溜息を零した。

 ヴィズラはディンを自分の住居スペースまで連れて行き、コフィン・ベッドに寝かせ、未だに電気を帯びていた胸部を覆うアーマープレートを外してやった。
 アーマープレートを外している間も、横たわったままディンは呻いていた。微かに聞こえる息遣いは、敗北に屈したことを嘆くように弱々しい。こんな風に弱ったディンの姿を見るのは、はじめてだった。
「おい、大丈夫か」
 さすがに心配になって揺さぶると、ディンはヴィズラの手を覆うように触れてきた。彼は唸るだけだったが、指が僅かに力んだので、ヴィズラはそれ以上なにもいわなかった。
 フラック・ベストに覆われた胸元が、呼吸に合わせて膨らんだり、へこんだりする。アーマープレートを外して気付いたが、こうしてみると、ディンの身体がずいぶんしなやかだ。無駄のない引き締まった、均整の取れた身体の輪郭は、フライトスーツ越しでもわかる。
——この身体を夜すがら抱いているのか、俺は。
 ヴィズラの腹の底で劣情が鎌首を擡げる。こんな状況で欲情したことに苦笑して、ディンから視線を逸らした。
 不意に名前を呼ばれた。首を巡らせると、ディンがのろのろと腹に手を置いて「迷惑をかけた」いった。「おかげでだいぶ楽になった、ありがとう」
「……そうか」
 ふいと顔をそむけて黙り込んだヴィズラを、ディンは頭を傾けてじっと見詰めた。
「どうした? らしくないな。詰られるかと思っていたんだが」
「それどころじゃなくてな」
 沈黙がふたりの間に降り注いだ。完全に覚醒したディンが「まさか」と口火を切った。「勃ったのか?」
 ヴィズラは背筋を伸ばした。今度はディンが黙り込む番だった。
「抱かれてもいい」
 腹に置いていた手を床に置いて、ディンは囁いた。
 衣擦れの音だけがした。テント型のコフィン・ベッドの片隅に置かれたランプの仄燈に照らされたシルエットが重なった。
 ディンの折り曲がった両足の間に身体を割り入らせ、ヴィズラは彼を見下ろした。互いのヘルメットの内側にこもる息遣いは、湿っていて、肉欲の熱気に満ちている。
 フラック・ベストをはだけさせ、ディンの括れた腰を挟み込んで、腹を滑って、胸元まで撫で上げた。普段の交わりでは触れられない胸元に、フライトスーツ越しに触れている……。
 筋肉で隆起した胸を左右から押し上げる。手に吸い付くような柔らかさだ。直接触れたくなって、ツナギ状のフライトスーツの上下を繋いでいるジッパーを開ける。黒い生地の間から、色の白い肌が覗いた。隙間から手を差し込んで生地を押し上げる。古傷がいくつもあった。剥き出しになった胸に触れると、くすぐったいのか、ディンは身体を強張らせた。
「そんなところに触れても、男は感じないと思うが」
「試す価値はあるだろう」
 ヴィズラは身体を乗り出して腕を伸ばし、簡易テーブルの抽斗から、潤滑油のボトルを取り出した。
 指先に中身を少し垂らして馴染ませて、乳首に親指の腹を置いた。控えめな突起を軸にして撫で摩り、乳輪を一巡し、摘み上げる……両方とも詰るうちに、ディンが顔を逸らした。
「感じるか?」
 すっかり硬くなった乳首を指の腹で掻いて、ヴィズラはわざと訊ねる。本当は訊かなくてもわかる。快感を感じている時、ディンはいつも顔を逸らすのだ。案の定、ディンはなにもいわなかった。
 潤滑油でぬらぬらと照った乳首は、いやらしくぷっくりと尖っている。その様がヴィズラの劣情を煽った。腰回りが急速に熱を帯びていく感覚がして、ヴィズラはごくりと喉を鳴らした。いますぐにでも男の本能をブチ込んでやりたい……。
 指の腹で乳首を挟み込み、摘み上げると、ディンは「あっ」と声を漏らした。見れば、股間が盛り上がっている。
「男はここじゃ感じない、だったよな」強弱をつけて軸を指の腹で押し潰す。「本当に感じてないのか?」
「……っ、感じてなんか、ないっ」
 両腕を突っ張って、ディンはヴィズラを押しやった。それから起き上がり、「挿入れるなら、早く挿入れろ」自分の股座に手をやり、繋がる部分を露出させた。そこは緩く屹立していたが、彼はそれを見られないように、両膝を突いて背中を向けた。
 ほくそ笑みたいのを堪え、ヴィズラも膝立ちになり、フライトスーツの前を寛げた。解放された性器は痛いほどに膨れて天井を向いた。ヴィズラはディンをうしろから抱き寄せた。胸元にディンが寄り掛かり、身体が密着する。両足をさらに開かせて、マントを捲り上げ、潤滑油でねとつく指で窄まりを探り、ほぐしていく。
「ん……くっ」
 孔を拓かれて、ディンは息を乱した。ヴィズラは空いていた片手を胸元に滑らせ、再び乳首に触れた。
「ふれ、るなっ……」
「俺が楽しむだめだ」
「……っ……」
 新しく見付けたディンの泣き所を責め立てながら、ヴィズラは時間を掛けて孔をほぐしていった。
 軸には直接触れずに乳輪を一巡したり、押し潰したり、指先で弾いた。孔の奥へ指を進めるのに合わせて、きゅっと乳首を強く摘まむと、腕の中でディンの総身が大きく痙攣した――彼は射精していた。
「……っ、~~~~~……っ!」
 ヴィズラは舌先で上唇をなぞり、込み上げた鋭い劣情を噛み砕いたが、限界だった。孔から指を引き抜き、射精感に打ち震えているディンの背中を押して四つん這いにさせた。丸見えになった尻たぶを掴み取り、性器の根本を握って、窄まり目掛けて腰を突き出した。
「……んっ——ぐ……!」
 ほぐれた孔は硬く張り詰めた昂りをあっという間にすべて呑み込んだ。肉体関係を結んでから、何度も互いを喰らい合ってきたので、ディンの弱点はわかる。ヴィズラは緩急をつけて律動を繰り返し、甘美な刺激を求めている媚肉を貪った。ディンの肉体は何度味わっても飽きることのない、極上の馳走だ。
「おっ——ぁ、あっ、あっ……!」
 仰け反るディンが体勢を崩さないよう、うしろからしっかりと抱きかかえ、ヴィズラは腰だけを動かした。体内は狭くて温かく、ぬるぬるとしている。肉壁は四方からキツくヴィズラを締めつけてきて、気持ちがいい。浅い場所まで腰を引いて、一息に突き出すと、ヴィズラの形に慣らされた体内が締まった。
下生えをディンの尻たぶにくっつくくらい密着した。ヴィズラの猛々しい雄は、肉襞を轢き潰して抉り、最奥を何度も強く叩く。喘いだディンの腹から力が抜けた一刹那、ヴィズラはさらに奥へ食い込み——窄まった結腸を貫いた。
 ディンが声にならない濁った悲鳴を上げた。結腸の窪みに留まったまま短いストロークで責め立てると、ディンはまた呆気なく射精した。ヴィズラは容赦なく、自分だけが知っている窪みに、ぐぽぐぽと亀頭を食い込ませた。ディンの性器から噴き上げていた白濁は無色の体液に変わり、どっぷりと間歇的に溢れ出て、糸を引いて滴り落ちた。
 汗ばんだ肌がぶつかり合う破裂音に、互いの乱れた息遣いが重なる。ヴィズラの腹の底で、ふつふつと法悦エクスタシーが煮えてきた。
「……へばるなよ」
 ディンが快楽から逃げられないように、下腹部を抱きかかえる。貪欲にヴィズラを求めて攣縮している臓腑の隙間をみっちりと埋め、泣き所を責め立てる腰使いから、射精に向けた荒っぽいものに切り替える。ヴィズラは肉体を支配する強烈な男の本能のままに腰を揺すり、勢いよく抜き差しを繰り返した。肉と肉が激しくぶつかりあって、どちゅん、ごちゅん、と、何度も湿った音が弾ける。
「っぅ、あっ、ま——待って、くれ」
 いつものように息も絶え絶えに懇願をはじめたディンを無視した。情事の時に待てといわれて素直に待つ男などいるわけがない。
 ディンの掠れた喘ぎ声と、子種を吐き出そうとはちきれんばかりに張った睾丸が、潤滑油で濡れた尻たぶにぶつかる重々しい水音が、ヘルメット越しにヴィズラの耳を楽しませた。
 もっと泣かせてやろうと、ディンの下腹部に回していた手を胸元までせり上げ、勃起した乳首を捏ねくり回す。
「や……やめろ、それっ……ぐっ……あっ、ぁっ」
 喉の奥から声を絞り出し、極致感に打ちのめされたディンは扇情的で、たまらなくそそられる……。胸部への甘ったるい刺激を受けて、体内がいっそう強く締まり、ヴィズラの中で強烈な射精感が一気に沸騰した。
射精すぞ」
 ふっと大きく息を吐き、結腸の滑らかな谷間に亀頭を押し付けて、煮詰まった欲望を吐き出した。腕の中で、ディンの肉体が不規則に、小刻みに拘攣している。
 ゆっくりと腰を引いて孔から抜け出ると、ディンは前のめりになり、両手を突いた。マントが捲れ、尻が丸見えだ。内側の粘膜を晒してひくついている孔から、吐き出したばかりの濃い精液が溢流して、内腿を伝い落ちていく。そんなそそる光景を見下ろしていると、ヴィズラの男の本能は勢いを取り戻した。
「悪いが、もう少し付き合ってくれ」
「……胸は、触るなよ」
 ディンは首を巡らせて低い声でいった。まるで小動物の威嚇のようだった。
「なんだ、感じたか?」
 問い掛けにディンは答えなかった。実にわかりやすい。忍び笑いを漏らして、ヴィズラは再び、魅惑的なラインを描くディンの腰を掴んだ。