Blue Cookie Sky

 ラグナーは、隣の岩場にちょこんと腰掛けている子供の方へ顔を向けた。自分とは違う種族の子供——孤児のグローグーは、先ほどから、黙々と青いクッキーを食べている。片手に銀色の包みを持ち、一枚食べては、また一枚取り出す。さっきからそんな調子だ。黄褐色のローブの胸元には、零れた食べかすがついている。
 彼らの父や他の大人たちは、指導者であるアーマラーの元に集まり、なにやら難しい話をしている。子供たちはその間、鍛錬は休憩だ。ラグナーはなんとなく、ひとりで岩場に座っているグローグーが気になってこうして傍にきたわけだが、彼は菓子に夢中なのである。
「父さんたち、なに話してるんだろうね」
 ラグナーは、投げ出した足をぷらぷらさせた。グローグーが首を巡らせた。頬には、青いかけらがついている。
「戦いに行くのかな」まだうまく話せないグローグーに、独り言同然に話し掛ける。「そしたら僕たちは留守番だ」
「ん、きゃ」
 舌っ足らずの喃語を発すると、グローグーは菓子の包みに手を突っ込んだ。まんまるいクッキーを持った小さな手が、ラグナーの方へ伸びてきた。
「うーみゃ」
「……くれるの?」
 グローグーが何度か頷く。ラグナーはクッキーを受け取った。
「ありがとう」
 未知なる菓子を、まだ被り慣れていないヘルメットの隙間から口元に運ぶ。生地の柔らかいクッキーだった。一口齧ると、ほろほろの生地からコクのある甘さが広がった。中にはもったりとしたクリームが入っていて、それがすごく甘くて美味しい。生地と合う。グローグーが夢中になる理由が分かった気がした。
「美味しいね。これ、好きなの?」
 ラグナーは半分齧った菓子からグローグーへ視軸を向けた。
「ぷぅわ」グローグーの長い耳が上下に小刻みに動いた。「みゃ、きゃ」
 まだ言葉をうまく話せない彼なりのお喋りに、ラグナーは笑った。嘲笑ではなく、微笑ましさからくるものだ。
「そっか。僕もこれ好きだな」
 もっと話せたらいいのにな……。
 ふたりは父親が戻ってくるまで、並んでクッキーを食べた。
 頭上に広がる高い空は、クッキーのように青く、澄み切っていた。