ネヴァロは溶岩地帯と黒い砂地が広がる惑星だ。人々の営みが見られる場所を除けば灰色の荒野がどこまでも広がっている。噴火によって積もった火山灰混じりの土壌では、作物は育たない。それでも、不毛の地に生きる人々の知恵によって、ネヴァロでは乾燥に強い植物や作物が育てられてきた。今では、郊外で畑を有する者も多い。
そしてまさに今、都市の外れに居を構えて日の浅いディン・ジャリンもまた、畑を耕そうとしていた。市場で培養土や肥料、種だけでなく、鍬とシャベルといった農具も購入してきた。二日間半日以上かけて耕起し、畝を作り、三日目に、ようやく畑と呼べるほどの菜園ができたころには、くたくただった。
あとは種を植えるだけだ……。
庭先でグローグーと昼食を摂りながら——今日はパンにハムとバンサのチーズを挟んで焼いたものと、グローグーの好きなオムレツを作った——ディンは未完成の畑を眺めた。一月もすれば成長の早い野菜が採れるだろう。半年後にはジョーガン・フルーツが実る。うまくいけばの話だが。
「もうひと踏ん張りといこう」
食事を終えて少し休んで、ディンはふーっと溜息をついて立ち上がった。腹を満たしたグローグーも椅子から降りて、あとをついてきた。
「種を植えてみるか?」
ディンは先ほど鍬で掘り起こして作った深い溝の横でしゃがみ込んで、種の入った掌サイズの麻袋の口を広げてグローグーに見せた。グローグーは不思議そうに小首を傾げ、喃語を漏らして麻袋覗き込んだ。
「こうやるんだ」
ディンは揃えた二本の指で、耕した土壌に等間隔に三つ穴を空け、そこに摘み上げた種をいくつか落とし、盛り上がった柔らかな土を削るように落として被せた。三つの穴をすべて埋めて「やってごらん」と促すと、グローグーは頷いた。
小さな握り拳が土を何度か突く。ちょこんと空いた穴から、ミミズが顔を出し、這い出てきた。グローグーは驚いたのか「ぴゃ」と声を上げて長い耳をぱたぱたと動かした。
「ミミズだ」
ミミズは丸々と肥えていた。いきなり地上に出てきたものだから、慌てたように土の中に戻ろうとのたうち回っている。ミミズは長い身体をくねらせて、あっという間に住処に潜っていった。グローグーははじめて見るミミズを追って溝に手を突っ込んだが、掴んだのは土だけだった。
「ミミズがいるのは、土が良質になった証拠なんだ」
土の感触が楽しいのか、グローグーはきゃあと笑い声を上げて隆起した土を叩いた。三本指の手形がいくつも散らばる。グローグーはここ二日ずっと土を弄っては黄褐色のローブを真っ黒にしていたが、何事も経験だ。それに、子供が夢中になることはいいことだとディンは思う。
結局種はすべてディンが植えた。グローグーは少し離れた場所で、せっせと土を掘り返して山を作って遊んでいた。
人の営みは、簡単なようで難しい。それでも、この場所が帰る場所となったのなら、種子が芽吹き実るように、豊かにしていきたい。グローグーにとっていい環境にしていきたい……。
そんなことを考えながら、ディンはグローグーの背中を見詰めた。すっかり土塗れだ。微笑ましくて、思わず笑ってしまった。あとで風呂に入れて、ローブも洗濯しよう。