Burn and Sleep

  

※S1では息子の存在は明確にされていないのでパズひとりという解釈で書いています。

 捕らえた賞金首たちを賞金稼ぎを束ねるグリーフ・カルガへ差し出し、報酬を受け取ったディン・ジャリンは、右太腿の鈍い痛みを堪えながら、ネヴァロ・シティの地下へと続く階段を下っていた。
 最後の仕事で敵のドロイドたちの猛反撃を受け、レーザー光線を一撃喰らってしまった。幸い掠めただけで傷は浅い。レイザークレストを降りる前に応急手当をするべきだったかもしれないが、胸当てブレストプレートを損傷してしまったので、一刻も早くアーマラーに修理を頼まなくてはならない。
 階段を下りきって通路を少し進むと、見張りの同胞と遭遇した。同胞はディンを見ると、大きく頷いて道をあけてくれた。ディンも頷き返し、横を通り過ぎた。
 ネヴァロ・シティの地下に広がるこの下水道を訪れる者はいない。燈が欠けていて複雑に入り組んでいて、同胞たちにとって究竟の隠れ場所だ。熟練の防具鍛冶師であり、指導者でもあるアーマラーの鍛冶場グレート・フォージを中心として、多くの仲間が人目を忍んでひっそりと生活を送っている。
 ディンの第二の故郷でもあるマンダロア星系に位置する『コンコーディア』も他の惑星や衛星と同じく帝国軍に蹂躙され、汚染された。多くの同胞たちは銀河に散り、一部は『ネヴァロ』を拠点にしている。マンダロリアンたちにとって、帰るべき故郷はこの場所だ……。
 ディンは、灰色の惑星『ネヴァロ』を拠点としているギルドに戻った時は、できる限りここへ顔を出すようにしている。孤児たちを養うために資金を提供する責任があるからだ。
 いくつ目かの角を折れ、ディンは鍛冶場グレート・フォージに辿り着いた。中には数名の同胞がいた。視線が一斉にディンに集中する。炉で作業中のアーマラーは、首を巡らせてディンを見ると、「怪我をしている」静かな声で紡いだ。「誰か、手当てを」
「あとでいい」ディンは誰かが動き出す前に続けた。「それより、アーマーを修理してほしい」
「いいでしょう。ただ、少し時間が掛かる」
「どれくらい掛かる?」
ディンは胸当てブレストプレート肩甲ポール・ドロンを外した。防具がないのに地上に戻るわけにはいかない。
「一晩」アーマラーは淡々と続けた。「あなたはその間に手当てを」
「わかった。今夜は下水道ここで過ごさせてもらう。寝床はないか?」
 空いていた作業台にアーマーを置き、ディンは首を傾げ、仲間に問い掛けた。
「私のところは空いていない」同胞のひとりが口火を切った。「すまない」
「いいんだ」
「パズ・ヴィズラ、あなたのところは?」
 ディンが今夜は適当に通路で眠ろうと決意した時、アーマラーが炉に視線を溜めたまま言った。並んだ同胞の列の中で、一際背が高い大柄なパズ・ヴィズラのシルエットが揺れた。彼にバイザー越しに負傷した足を見られていることに気付いて、ディンは身じろぎした。
「俺のところなら空いている。治療もそこでやれ」
「……いいのか?」
「ああ。ついてこい」
 ぶっきらぼうに言って踵を返したヴィズラのあとに続く。アーマーを外し、少し軽くなった身体は落ち着かない。痛み出した太腿を押さえたいが、堪えた。
 ヴィズラの居住スペースは、孤児や同胞たちの居住スペースから離れた、通路の外れの窪みにあった。小ぢんまりとしたスペースで、地上から運んできたであろう簡易テーブルと簡易椅子、マンダロリアンのアイデンティティともいえる武器をしまうためのラックと、テント型の簡易コフィン・ベッドしかなかったが、男ひとり分の寝床としては十分だ。
 ランプの仄燈に照らされたヴィズラは、武器ラックと壁の隙間から小脇に抱えられそうなサイズの箱を引っ張り出してきた。
「これを使え」
 コフィン・ベッドの隣に置かれたそれは、ボタンひとつで無機な音を立てて大きくなった。ヴィズラが使っているものと同じ折り畳み式のコフィン・ベッドだった。通気性のいいカバーに覆われていて、入口だけが四角く切り抜かれている。
「応急キットは壁に掛かっている」
「ありがとう」
 ヴィズラはフンと鼻を鳴らすと、重量感のある足音と共に去っていった。ディンは彼の言葉に甘えることにした。治療を終えると、完全に血は止まり、痛みも引いた。
 その後、食事を終えて、ディンはヴィズラの元に戻った。
 ふたりきりだ。彼とこうして夜を共に過ごすのは、子供の時以来かもしれない。孤児となってマンダロリアンの共同体に加わって間もない頃、師匠が戻ってこなくて寂しくて仕方がない夜、ヴィズラは傍にいてくれた。その時にはすでにヴィズラはヘルメットを被っていた……。
 思い出話をすることもなく、素っ気なく、ヴィズラは身を屈めて自分のコフィン・ベッドに入っていった。ディンもそれに倣い、用意してもらったコフィン・ベッドに入った。天井は低いが、ヴィズラでも横になれるサイズとだけあって、かなり余裕がある。ヘルメットの下でふーっと息を吐き、柔らかいマットレスに横になり、ブランケットを掛けて、ディンは瞼を下ろした。疲労が蓄積された身体から力を抜くと、意識はすぐに眠りの底へ落ちていった。
 眠りに落ちて間もなく、ディンは微かな音で目を覚ました。一刹那の間に意識が覚醒すると同時に、癖でホルスターのブラスターに手を伸ばしたが、ヘルメットの聴覚センサーに届くのが乱れた呼吸音であることに気付き、警戒は不要であることを察した。
 ディンは瞬きを繰り返し、訝しみながら片手を突いてゆっくりと上半身を起こし、入口から顔を出した。ランプの燈は消えて辺りは真っ暗だが、ヘルメット越しだから視界は問題ない。
 呼吸音に混ざり、呻き声も聞こえる。向かいのコフィン・ベッドの中で、ヴィズラはブランケットもかけず、背中を向けて横たわっている。悪夢でも見ているのだろうか? それならば、起こした方がいいだろう……。
 四つん這いでコフィン・ベッドを出て、しゃがんだまま片膝を突いて近付いて、広い背中に手を伸ばす。
「大丈夫か?」
 声を掛けるのと同時に肩に触れた瞬間、ヴィズラが身じろぎした。
「大丈夫だ」
 息が荒い。片膝を立ててカチャカチャと音を立ててベルトを締める彼の慌てたような仕草に、ディンはふと気付いた。
 マスターベーションをしていたのだ。
「……悪い」
 弾かれたように肩から手を離す。どうしていいかわからず、ディンはその場で固まってしまった。こういうのは、たとえ仲間であっても踏み込んではいけないことだ。闇よりも暗く、重たい沈黙が降り注ぐ。しばらくして、長く息を吐き出したヴィズラが咳払いをした。
「溜まっているんだ。隣にお前がいるとわかっていながら、抑えられなかった」
 巨躯に似合わない声量だった。
 性欲——それはディンにとっては元来薄い欲求だったが、完全にないわけではない。欲望に駆られる気持ちはわかる。ディン自身、激しい戦闘を伴う仕事が続いたあとは、自慰をする時だってある。ヴィズラもディンも若さに振り回される歳ではないが、かといって老いてもいない。心身共に活動力に満ちている男の盛りだ。衝動を抑えられない時もあるだろう。
「おっ勃ったままだ。眠れそうにない」
 ヴィズラは身体を起こし、ディンの方を向いて胡座を掻いた。ディンはおそるおそる視軸を落とした。アーマーに覆われていないヴィズラの無防備な股間が盛り上がっている。
 欲情した男の息遣いに、ディンは歯を食い縛った。腹の底がじわじわと熱を帯びていく。互いに黙り込んだ。降り注ぐのは、ねっとりとした沈黙の幕だ。それは目には見えないが、コフィン・ベッドの薄幕よりもずっと厚く、重い。
「勃ってるぞ」
 沈黙を破ったヴィズラの言葉を理解するのに時間が掛かった。剣吞と眉を寄せて自分の股座を見れば、たしかに、フライトスーツが盛り上がっている。
「お前も溜まっているのか」
「自覚がなかった。滅多に処理もしないからな」
「マスの掻き方を忘れたのか?」
「そういうわけじゃない」
「こっちにこい」
「……なぜ?」
「抜いてやる。昔やっただろう。あの時みたいに、ここには俺とお前しかいないんだ」
 ディンはヴィズラのコフィン・ベッドの空いたスペースを見詰めて逡巡した。ヴィズラのいう「あの時」を思い出す。まだ互いに未熟な年頃で、性に対する好奇心と若さゆえの衝動から、一物を扱き合った……。
 ヴィズラのコフィン・ベッドの空いたスペースを見詰めて逡巡したが——ディンはゆっくりと中に入った。膝立ちで向かい合って、黙ったまま、フライトスーツの前を寛げたヴィズラに倣う。
 下着から勢いよくまろび出た男の象徴は熱かった。ヴィズラの規格外の大きさのそれもまた、熱を持っているだろう……。
 下着の中で蒸れていた性器を握られた。「小さいな」
「お前がデカすぎるんだ」
 むっとして言い返したが、ヴィズラは鼻で笑っただけだった。
 はじめて味わう自分以外の掌……。レザー手袋グローブ越しだが、気持ちがよかった。
 性的興奮を駆られ、ディンはヴィズラに触れた。それは手の中で痛いほどに膨らんで、びくびくと脈打っている。摩擦は緩やかに続き、血管を浮かせて勃起している一物同士が触れ合いそうになって、どちらが先というわけもなく、ふっふと息を乱しながら、互いのものを重ね合わせた。ヴィズラから溢れ出た先走りが、密着した亀頭を濡らし、張り詰めた雁首まで伝い落ちている。ディンは根本を握り、先端にかけてせり上げていった。それをゆっくり何度か繰り返し、徐々にスピードを上げていく。ぬちり、ねちっ、と粘着質な音が跳ねた。どっぷりと漏れ出たふたり分の体液で滑りはよかった。鈴口を親指の腹で潰すように押すと、ヴィズラの身体が強張るのを感じた。ディンは舌なめずりをして、強弱をつけて肉の幹を扱いてやった。刺激を求めるままに、夢中で扱き合った。
「俺を見ろ」
 ヘルメットの面頬にヴィズラの肉厚な手が触れた。ヘルメット同士の距離が詰まり、かつりと音を立てて額部分が重なった。興奮を抑えきれていない息遣いは、官能を激しく駆り立てる。
 混ざり合った体液に塗れた陽根が掌と擦れる音と乱れた呼吸音だけが重なって、ぐちゃぐちゃになって——先にヴィズラが射精した。すぐにディンも溜まっていたものをぶちまけた。濃い白濁を掌で受け止めたヴィズラを見据えて放心する。驚いたことに、ヴィズラはまだ衰えていない。
 バイザー越しに目が合った。ヴィズラは一度俯いて、物言いたげに顔を上げた。
「抱かせてくれないか」
 ディンは再び、ヴィズラが発した言葉を理解するのに時間を要した。瞬きを繰り返し、何度か頭の中で言葉の断片を組み合わせる。
——抱く? お前が? 俺を?
「……本気か?」
「本気だ」
 間髪入れずに返ってきた返答に、ディンはヴィズラがこの状態をなかったことにするつもりも、茶化すつもりもないことを悟った。
 拒絶することもできたが、ノーとはいえなかった。ヴィズラは信頼できる男だ。孤児となり、マンダロリアンとして誇り高き共同体に加わってから、独り立ちするまで、生活を共にしてきた。一緒に戦ったともある、大切な仲間だ……。
——この男ならば、一度くらい、許してもいい……。
 乾きはじめた上唇を舌先でなぞり、ごくりと唾液を飲み込んで、ディンは口を開いた。「わかった」
 絞り出した声は、らしくない、弱々しいものだった。
 射精感に浸る間もなく、あれよあれよと組み敷かれた。太腿のあわいに割り込んで覆い被さったヴィズラの身体は厚かった。
「手早く済ませてくれ」
「そう急くなよ」
 ヴィズラは掌に溜まっている白濁を、ディンの排泄器官に丹念に塗ったくってきた。
「なにをしている?」
「滑りをよくする必要があるだろう」
 濡れた指が、排泄器官の出口である窄まりを撫で摩る。ディンの括約筋はヴィズラの指を拒んだ。
「力を抜け」
 ぶっきらぼうに言って、ヴィズラは円を描くように孔を撫で摩ってきた。ディンはいわれた通りに、ふーっと息を吐いて腹から力を抜いた。ぞくぞくした。鎮火していた淫らな炎が、ふつふつと腹の底で燃え盛っていく。
 指の腹に神経が集中している敏感な浅い部分を擦り上げられ、噛み締めたディンの歯の間から、鋭い吐息と呻き声が漏れた。ディンの反応を窺うように、ヴィズラは根気よく孔をほぐしていき、指を増やした。ディンはふっふと息を乱して繋がった場所に視線を向けた。中指と薬指がくねるように動いて孔に差し込まれていくのが見えた。指が根元まで埋もれると、掌が小刻みに規則的に前後した。
 くねり、曲がり、指は確実に腹を拓いていった。内臓を掻き乱される未知なる感覚にディンは怯み、息も絶え絶えになった。甘ったるい刺激が腹を冒していく。
「ん、っ……ぐ……」
 指は生き物のように腹の中を突き進んでいく。ふたり分の呼吸音と、指が粘膜を搔き乱す粘着質な音だけがディンのヘルメットの聴覚センサーに届いた。繋がるために最低限の部分だけを剥き出しにして、行為は続く。会話は必要なかった。ランプの仄燈に照らされたコフィン・ベッドにこもるのは、男ふたり分の湿った息遣いと、汗ばんで火照った身体から滲み出る体臭と、盪くした果実が放つ芳香のような、噎せ返るほどの官能だった。
 不意に掌の動きが止まり、前後していた指が腹側に向けて鉤形に折り曲げられた時、ディンは目の前が真っ白になった。不随意に腹と太腿が痙攣する。得体の知れないなにかが、脊髄を伝い上がってくる……! 鉤型に曲がった指の腹がなにかを探るように滑り、ある一点を押しやった。
「……っ!」
 瞬発的に快楽が背骨を駆け上がり、ディンの太腿が跳ね上がった。腹の上で緩く勃起していたペニスから精液が噴き上がった。
 びくびくと身体を痙攣させて弱々しい呼吸を繰り返しているディンを見下ろし、ヴィズラは指を引き抜いた。
「もう限界だ。挿入いれるぞ」
 お預けを喰らっていた一物が、腹に潜り込もうとしている……。
「そんなデカいもの、挿入はいるわけがない」
挿入はいる。そのためにほぐしただろう」
 ヴィズラはディンの片膝の裏を掴み取ってさらに足を広げさせ、自らの肩にディンの踵をのせた。それから自身の根元を握ると、先端で尻の割れ目をなぞり、睾丸を押し潰し、一度も男を受け容れたことのない孔をねちっこく嬲ってきた。
「……ぐっ」
 ディンは大きく息を吸い、できる限り腹から力を抜いた。孔に押し当てられた亀頭が、腹の内側に押し込まれていく。痛みはほとんどなかったが、少しずつヴィズラを受け容れると、内臓を押し潰されているような感覚に襲われた。
「う、ぐっ……」
 圧迫感に合わせて、じわじわと苦しみが迫り上がってくる。ディンはなんとか浅い呼吸を繰り返した。泳がせていた視線を繋がった部分で止める。太く逞しい肉杭が、深々と腹に突き立てられている。
「……全部挿入はいった」
 囁きのあと、ヴィズラはゆっくり動きはじめた。腹の隙間を埋めている塊がずるりと引く。その感覚はまるで排泄時の脱力感のようだ。
「あっ、あぅ、ぐ……」
 抜け落ちそうなところまで下がると、ヴィズラは腰を止めた。そこから分厚い身体はしばらく動かなかった。直腸の攣縮を楽しんでいる……。
 腹に居座る圧迫感を逃すために深呼吸をしていると、ピストンがはじまった。引いては押し込む動きに合わせて、ディンの口から反射的に呻き声とも溜息ともつかない声が漏れた。女が腹を突かれている時に出る嬌声と同じだと気付いた時、ディンの中で羞恥心が噴き上げた。
 抜き差しはスムーズに続き、尻たぶと、はち切れんばかりに張り詰めた睾丸がぶつかりあって、生々しい湿った音が弾けた。粘着質な音はディンの意味を成さないか細い声と溶け合って、コフィン・ベッドの中にこもった。
 腰を揺すっているヴィズラの片手がディンのフライトスーツのジッパーに触れた。左から右にジッパーが動き、肌が覗く。手が隙間に差し込まれ、腹から首元に向けて滑った。フライトスーツがたくしあげられ、鍛え上げられた、色の白い、均整の取れたしなやかな肉体が胸元まで露わになった。括れた腰。引き締まった腹。控えめな胸筋……ディンはされるがままに、肉体をヴィズラに委ねた。
「……そそるな」
 ヴィズラはさらに身体を乗り出して、上から押し潰すようにディンを抑え込み、腰をくねらせた。ヴィズラの腹の横からディンの足だけが突き出した。肉と肉がぶつかる破裂音が乱れた男ふたりの呼吸音に被さる。血の通った男同士の交わりの気持ちよさに、ディンは打ちのめされた。
「は、あ、あっ……! ……ぅっ」
 抽迭が繰り返されるうちに、得体の知れないなにかがディンのはらわたを食い破り、みぞおちの辺りで渦を巻いた。
「…………! おっ――」
 ヴィズラは一息にディンの最奥を貫いた。臓腑の窄まりを抉じ開けられ、瞬発的にディンの全身の筋肉が強張り、脱力し、また強張った。息がうまくできない。みぞおちで渦巻いていたなにかが破裂した。
「〜〜〜〜っ!」
 一刹那のうちに、目の前で火花が散った。声にならない声を上げ、ディンはヴィズラの胸を押しやった。たしかに腕を突っ張ったが、力は入っていなかった。股座で揺れていたディンの陽根から、どっぷりと体液が溢れ出たが、それに気付いたのはヴィズラだけだった。
 ディンは、幼い子供が〝いやいや〟をするように首を振ることしかできなかった。
「ケツでイったのか?」
 ヴィズラの問い掛けに、ディンは答えられなかった。押し寄せる快楽の怒涛に飲み込まれ、気を失わないよう抗うのに精一杯だった。
 ヴィズラは上半身を起こし、ディンの両足首を掴んで、短いストロークで奥を突く動きを繰り返した。ディンは「やめろ」と懇願したが、呂律は回っておらず、ヴィズラに鼻で笑われた。
「俺もイかせてくれ」
 奥に留まったままヴィズラは欲望を口にし、ラストスパートを掛けた動きに切り替えた。ディンの中で、絶頂の導火線に再び火が付いた。脊髄に絡まった導火線は短くなっていき、迸る快楽の熱は瞬く間に脳髄まで迫り――爆発した。
「あ――ああっ……!」
 極地感オルガスムスに飲み込まれた肉体はいうことを聞いてくれない。気持ちがいい。苦しい。わけがわからない……。
「っ、はっ、射精るっ……!」
 ヴィズラは腰を止め、ディンの体内で弾けた。長い射精だった。間歇的に出る精液がすべてディンに移される。射精を終えてもヴィズラはすぐに去らず、もっと奥へ注ぐように何度か抜き差しをした。腹の中を掻き混ぜられて、思わず身震いしてしまう。
 拡張した孔から抜け出た陽根は、さすがに萎えていた。
 ディンの呼吸に合わせてひくつく孔から子種が溢流するのを見下ろして、ヴィズラは「悪くなかっただろう」いった。
「今夜のことは、俺とお前の秘密だ」
 ヴィズラはディンの頭の横に両腕を突っ張った。ヘルメットが引き合って、額が硬い音を立てて重なる。ディンは腕をヴィズラの首のうしろに回した。埋め火にも似た快楽の名残が、間に成立した秘密を暖めていく。
「この秘密を共有してやってもいい」
 ディンはまっすぐにヴィズラを見詰めた。
 これは愛情が成す行為ではない。性欲を発散するためのものだ。それは互いに理解しているが、端緒がなんであれ、関係を持ったのなら、慰め合ってもいいだろう。ネヴァロの夜は、長いのだから。