清廉な人

「お前さんは昔から嘘がつけないよな」
「うん。すぐ顔に出るからね」
 春の日差しがよく似合う清廉なお人よしは、飲みかけのコーラのグラスをカウンターに置いた。
「どれ、試しに俺に嘘をついてみろ」
「わかった」椅子に座り直し、思惑するように唸ったあと、なにか決心したような表情をした。「マスターのことが嫌い」
 自信満々に言い切ったくせに、目が泳いでいる。わかりやすい。案の定、すぐに肩をすくめて「やっぱり嘘はつけないよ」照れくさそうに笑った。
「それでいい。お前さんのそういうところが、昔から好きなんだよ」
 溶けた氷が崩れて、グラスに当たってからんと心地いい音を立てた。
「マスターのことは好きだよ。大好きだ」
「お前さんが俺のことが心底好きなことくらいわかってるさ」
 ほとんど同時に噴き出した。ひとしきり笑ってから、肩を軽く叩いてやった。