繋ぎ目

 横たわる剥き出しの背中は均整が取れているが、輪郭は頼りないほど細い。
 肉体改造もできない、強く抱けば壊れてしまいそうな柔く脆い種族なのだと改めて思い知らされる。
 それでも、手放したくはなかった。だから、交渉が決裂したあの夜に、拐おうと決めたのだ。
 なだらかな背中の真ん中で連なる美しい背骨の凹凸を視線で追う。
 背骨というのは、生物の身体を支える基幹だ。どんな種族であれ、得体の知れない生物であれ、場所や形状は殆ど同じ。どの位置をへし折れば死ぬのか、どこにダメージを与えれば再起不能になるのかわかる。
 肩甲骨の間に中指を置き、ゆっくりと腰に向けて凹凸をなぞっていく。柔肌の下にある骨の硬さを手袋越しに感じた。
 幅広の肋骨の真下——十二番目の胸椎——で指を止め、視軸も固定させる。ここは身体を繋ぐ役割がある、最も重要な骨だ。私とお前を繋ぐ執着のように、絶対的で、揺るぎないものだ。
 歪みのない身体から手を離す。
 穏やかな規則的な寝息だけが聴覚器官に届く。
 名前を呼んで、首の後ろに口唇器官を押し当てた。
 無垢な眠りを妨げたくなくて、部屋を出た。