ふと、ブティックのショーウィンドウの向こう側で照明を浴びている赤いハイヒールが目に入って、足が止まった。行き交う人々の間を縫い、傍に寄ってまじまじと眺める。
爪先が幅狭の真っ赤なハイヒールは、黒い台座の上でスポットライトの燈を吸って、妖艶に佇んでいる。優美さをたたえる曲線は完璧だ。これを履くのは、きっとお姫様みたいな女ではない。自信家で、気紛れで、強かで、己の魅力を分かっている女だ。
たとえば、アイツみたいな。
団員と談笑していると、スクリックが戻ってきた。
傍に寄ってきた彼に両手を出すように言われ、従うと、掌に杖の柄が向けられた。装飾された艶やかな宝石がきらりと光った瞬間、ポンッ、と軽快な破裂音がして白煙が立ち込め、掌に重さを感じた。現れたのは、赤いリボンと派手な包装紙に包まれた箱だった。
「贈り物だ。きっと似合うぞ」
祝祭の朝に、ツリーの下に置かれたプレゼントを開ける子供のように包装紙を破きたい気持ちを抑え、丁寧に剥ぎ取り、箱を開けた。
中には、曲線の美しい、光沢を帯びた赤いハイヒールが入っていた。
「履いてみてくれ」
促されるまま履き替えた。サイズはピッタリだ。背が高くなった分、スクリックとの距離が少し埋まった。
「素敵な靴ね」胸が躍った。「どう?」
「似合ってる。思った通り、アンタはやっぱり赤が似合うな!」
「よく私の足のサイズがわかったわね」
「ふたりきりの時に隅々まで見てるからな。足のサイズだけでなく、指輪のサイズもわかるぞ」
「団長、それなんか……エロいッス!」
「そういうのよくないと思いまーす」
口笛を吹いたり、顔を覆う団員たちを横目に、スクリックは豪快に笑った。
「さあ、踊ろう。お手をどうぞ、お嬢さん」
片手が差し出される。迸る蒼炎は、いつもより勢いが強い気がした。彼もまた、喜んでいるのかもしれない。
夜の帷の内側で、彼と躍る——刺激的な長い夜になりそうだ。