その日ミツマタは珍しく甘えたがりだった。
興奮気味に鎌首を擡げて、掌に小振りな頭を擦り寄せてきた。盲目の頭の方も撫でてもらおうと、負けじと頭を上下にゆらゆらと揺らしてねだってきた。健気な姿が中々愛らしかった。
「私を肩に乗せてくださいませんか」
「いいぞ」
むっちりとした蛇身を抱き上げて首の後ろへ下ろすと、ミツマタはすぐに尾を絡ませてきて、満足そうに舌をちろりと覗かせた。
「べビン様と同じ高さで物を見ることができるなんて、ミツマタは幸せ者です」
「いくらでも乗せてやる」
指先でミツマタの顎の下を掻いてやると、心地よさそうに口を開けた。
蛇腹が収斂したかと思うと、ミツマタは器用に身体を曲げて、顔の目の前まで距離を詰めてきた。
「べビン様……」
囁きに似た控えめな声のあと、唇にひんやりとした硬いものが触れた。ミツマタの丸みを帯びた鼻先だった。反対側の頭も首を伸ばして、鼻先を押し付けてきた。
ミツマタなりの愛情表現に、思わず頬が緩んだ。
「ずいぶん情熱的じゃないか」
お返しに、彼らの顎の下を指の背で支えてキスをしてやった。ミツマタの窄まった唇の鱗はつるつるしていた。
「わ、べビン様……嬉しいです……」
口をぱくぱくさせたあと、ミツマタは頬に身体を擦り付けてきた。
「……いい子だ」
ミツマタのことが可愛くて仕方がなかった。