好き好き大好き愛してる
べビン様の匂いと掌のあたたかさを覚えている。
慈愛に満ちた眼差しや、私の名前を呼ぶ声音の優しさを知っている。
私はべビン様が大好きだ。
努力の滲んだ胼胝だらけの手に抱かれ、指先で頭を撫でられるとうとうとしてしまう。
もし、私に獣のように鳴らす喉があって、感情を表現できる尻尾が生えていて、じゃれることのできる四肢があったら、きっと愛嬌のある素敵な愛情表現ができただろう。
もし、私に柔らかい被毛があったら、きっとべビン様も触り心地がいいだろう……。
鱗に覆われた冷たい身体を持つ私にできることといえば、頭を擦り寄せるか、舌をちろちろと出し入れするかしかない。
「なにか考えているな」
ハッとする。べビン様は口の端を片方持ち上げて笑っていた。
「はい。私も他の動物のように喜びを表現してみたいと思いました。それと、ふわふわの体毛があったらもっと撫でてもらえるかと……。ですが、私にはできぬこと」
「なんだ、もっと撫でて欲しいのか?」
双頭をくすぐられ、思わず力が抜けた。
「オレにはお前が喜んでいるのがよくわかる。お前は表情豊かだよ」
恥ずかしくなって、首を縮こませる。
「……べビン様」
「ん?」
「お慕いしております」
「俺もお前のことが好きさ」
蛇腹をくねらせてとぐろを巻く。べビン様は笑って、今度は顎の下を撫でてくれた。
ああ、私はこの方が大好きだ。