カニバル

 ババ・ソーヤーはご機嫌だった。
 エンティティから褒美として、大きな鍋をもらったのだ。深くて大きな、ピカピカの銀色の鍋。これなら、人一人分の腕や足を入れて煮込んでも大丈夫だ。
 今日は鍋だけでなく、儀式で抵抗しなくなった生存者の死体をもらったから、新鮮なうちに解体し、きれいな指はケネスにあげて、頭と内臓はドレッジにあげた。リサもなにか欲しがったので、ババは可愛い妹のような彼女に、特別に右腕をあげた。
 ババは皆に特製のバーベキュー・チリソースを振る舞えるのが嬉しかった。ババは丸一日――とはいえこの森には朝がこないのでどれくらい時間が経っているのかよくわからないが――肉が崩れてほろほろになるまで煮込んだ。
 煮込んでいる間に、シャルロットがウサギを狩ってきてくれたので、皮を剥いで焼き、崋山が仕留めてきた猪を一緒に捌いた。食欲をそそる香りがあたりに漂いはじめる。
 楽しい。
 嬉しい。
 今日もあたたかい食卓を大切な仲間たちと囲えることが、ババにとってはこの上ない幸福だった。ババは守らねばならない新しい家族たちと、夜の明けないこの森で生きている。