かけがえのない友である冒険者がカザグ・チャーの元を訪れたのは、或る夕刻のことだった。
急でごめんねと冒険者は言ったが、カザグは彼女の来訪を喜んだ。メンディカント269ダ・ザ、ドゾル・メロックと共に、祖先たちを百年にも渡る苦しみから解き放ち、禁断の書を巡る戦いを経てから、カザグたちの絆は深まっていた。カザグは冒険者のことを「刎頸之友」と呼
かけがえのない友である冒険者がカザグ・チャーの元を訪れたのは、或る夕刻のことだった。
急でごめんねと冒険者は言ったが、カザグは彼女の来訪を喜んだ。メンディカント269ダ・ザ、ドゾル・メロックと共に、祖先たちを百年にも渡る苦しみから解き放ち、禁断の書を巡る戦いを経てから、カザグたちの絆は深まっていた。カザグは冒険者のことを「刎頸之友」と呼んでいる。それほどまでに親しみを持つ者が己の元をおとなったのだ。喜ばぬわけがない。
滝の横にある細道の奥で、ふたりは光を放つ鉱石の傍で向かい合って座り、冒険者の手土産である酒と料理に舌鼓を打ち、談笑に耽った。
酔いもほどほどに回り、夜も更けた頃、冒険者は眠たそうに目を擦り「ねえ、隣に行ってもいい?」やはり、眠たそうな声で言った。
カザグが承諾すると、冒険者は鷹揚と立ち上がり、彼の隣にやってきて腰を下ろした。よほど眠たいのか、小振りな頭がこくりこくりと不安定に前後する。今にもうしろに倒れてしまいそうだった。如何なる時も凛然と戦う強かな彼女は、酒には弱いらしい。
「一酔千日。今宵はよい夜ぞ」
喉を震わせて小さく笑い、カザグは片手で冒険者の背中を支えようとした。すると彼女はカザグの分厚い手を取り、顔の横にある牙のような形をした太い白い角まで導いて、掌に角を擦り付けた。うっとりと、それこそ、陶酔したように。
アウラ族の愛情表現が角を擦り付けることであることをカザグは知っている。角同士を擦り合わせるのは、接吻と同じであることも。
——酔っている。戯れだろう。
カザグは鼻息をついて、彼女の角の先端を撫でた。
彼女が顔を上げる。その双眸に甘い期待が揺らいでいるのをカザグは見た。親しみ以上の熱いものがあった。男と女が視線で交わすものが……
カザグは冒険者の名を呼び、頬を掌で包み込んだ。火のような激情が、ふたりの間にはあった。
「カザグ・チャー……私……あなたのことが好き」
「ああ……吾輩は、刎頸之友と比翼連理の仲になれることを喜ばしく思う」
上と下で見詰め合った。先に彼女がカザグに向けて両手を伸ばした。カザグはその間に収まるようにして身を屈め、細く華奢な體を抱き寄せた。
「キスして」
キス。接吻——唇同士を密着させる愛情表現はアマルジャ族には存在しない。それでも、カザグはふっくらとした紅唇に、牙の覗く自らの口をそっと押し付けた。
傍らで鉱石が瞬いた。
彼女のローブや下着を脱がせるのは容易なことだった。
しなやかな體を組み敷き、己よもずっと小さく薄い肉体をまじまじと見下ろした。普段見えない彼女の體には美しい鱗があった。太く長い尾だけが己に似ているとカザグは思った。
「いっぱい触って」
長い睫毛に囲われた眸を瞬かせ、彼女は熱っぽい吐息を漏らした。
ほぼ四つん這いの状態で、カザグは彼女の豊かな胸に触れた。愛撫という行為もアマルジャ族には存在しない。たとえ愛し合う番であったとしても、子を成すのに必要のないことはしない。それでも今、カザグは彼女の肌の温かさを求めていた。
はじめて触れる異種族の雌の體を、カザグは撫でたり、揉んだりした。乳房の頂に、粘着質な唾液をまぶすようにして舌を絡ませると、彼女は喉を反らして艶やかな声を上げた。
筋肉で盛り上がったカザグの背中に、細い腕がしがみつく。
唇を合わせ、舌同士を交え、昂る愛のままに求め合った。
褌を取り払ったカザグの腰回りで、どうしようもない、手に負えない熱が渦巻く。股間のスリットから、仕舞い込んでいた生殖器を取り出す。慎重に露出させたつもりだったが、勢いよくまろび出た。雄の象徴を見て、彼女は目を丸くさせた。
「おっきい……」
ずっしりと重量のあるそれを彼女の下生えのないなだらかな股座に載せると、先端は臍をゆうに超えた。彼女の平たい腹の上で、血管を浮かせて勃起した黒黒とした逞しいペニスは、胎内にスムーズに潜り込むために、鈴口からどっぷりと先走りを垂らして天井を向いている。
「きて」
尻尾の付け根を下敷きにして体重が掛かって痛まないように、彼女はやや身体を傾けて足を持ち上げ、ほっそりとした指でしとどに濡れた肉色の粘膜に触れた。くぱあっと開いた女の入口は、蜜のように濃く粘ついた分泌液でぬらぬらといやらしく照って、カザグを求めてひくついている。
「ここに挿れて」
「委細承知。しかし、負担とならば即刻中断しよう。無理だけは、せぬように」
カザグは地面に手を突き、入口を探るように腰を前後させて距離を詰めた。巨根は呆気なくぬかるんだ割れ目を探り当てた。カザグは目を伏せ、腰に力を込め、彼女の中に侵入した。
「あ、あぅ……」
「……っ」
狭い胎内は熱くとろけ、硬い雄を四方から締め付ける。絡み付く襞と肉壁の感覚に打ち震え、カザグはゆっくりと胎内を割っていく。得も言われぬ快感が頭の先を突き抜けていった。自然と腰が動いてしまった。カザグの性器はすべて収まらなかったが、彼女の子宮口にはあっさり届いていた。
「……動くぞ」
「……うん」
ずっぽりと奥までハメたまま、緩やかに抜き差しをはじめる。子を宿す部屋の入口を押し上げるような腰使いで、凶悪な一物が規則的に前後する。カザグの腹の下で、甘美な声が弾ける。彼女を筋肉の詰まった巨躯で押し潰さないように、カザグは慎重に腰を打ち付ける。
「ひゃあ、あっ……!」
足首を掴んで開かれた両足を抑え込み、彼女の尻尾に体重が掛からないように尻が浮くように持ち上げ、上から押し潰すようにピストンを叩き込んだ。真上を向いた結合部が丸見えになって、亀頭がさらに深い場所——子宮口の窪みが亀頭に吸い付いて離さない——に食い込んだ。カザグは雄の本能のままに胎内を拓いていった。濡れた肉と肉がぶつかり合う音が嬌声に混じり、いやらしい水音が反響する。
「あ、あ、ぁ、カザ……んぅっ! イく、あ、イっちゃう、だめ、あ、あ、っ、~~~~~!」
何度も子宮口をノックされて、冒険者は喉を反らして絶頂した。胎内が痙攣し、雄をいっそうきつく締め上げた。途端に射精感が込み上げて、カザグは歯を食い縛ったが、堪えきれなかった。身震いして腰を止め、子宮口に向けて子種を蒔いた。どぷどぷと溢れ出る大量の精液は、雌の胎を満たしていく。
肉の隘路から退き離れると、雌孔から濃い白濁が溢流した。精液は愛液と混ざり合って尻を伝い、敷いたローブにまで太く粘っこい白い糸を引いて滴り落ちた。
カザグの性器は未だ勢いを失っておらず、ふてぶてしく反り返って、びくびくと熱く脈打っていた。
カザグは冒険者の角に、愛情を込めて牙を押し付ける。
「もっと、して」
彼女は小さく息を乱し、四つん這いになった。背骨が反り、肉付きのいい丸い尻が持ち上がり、太く長い尾が弧を描き、精液を滴らせる薄桃色の雌孔がカザグを誘う……
裸体にのしかかり、再び胎内に潜り込んだ。細く括れた腰を左右から掴み、抽迭を重ねる。動きに合わせてたわわな乳房がたわみ、ぶつかる度に尻肉が揺れる。
愛のままに快楽を貪り合う雄と雌の交尾は夜すがら続いた。
眩い友情の数歩先へ踏み出したふたりの影が、岩壁に貼り付いていた。それは大きな魔物のようにも見えたが、種族の垣根を超えて愛し合うふたりには、関係のないことだった。