この時期のウルクススは繁殖期だから、縄張り争いが酷いんだと、連れのハンターは言った。
雌を巡って雄同士が殺し合い、勝った雄はその場で雌に跨がって、只管交尾をするそうだ。
「ウルクススの性欲は半端なくてな。ハンターが近寄ろうが、攻撃されようが、ずっと腰だけは振ってやがる」
そう言って、ハンターは白い息を吐き出しながらにやけ、
「この前なんか、何を血迷ったか、ポポに腰振ってやがった」
肩を竦めた。
「じゃあ、そこを狙えば簡単に狩れる訳ですね」
「他に邪魔なモンスターが出なけりゃな。手分けして一頭ずつ狩ろう」
「わかりました…では、後程」
「ああ、健闘を祈るぜ」
太刀を背負い笑った彼の姿が粉雪に紛れ、私は白金世界へ足を踏み入れた。
ウルクススは直ぐに見付かった。
今までゆっくりと雪原を行き交っていたポポ達が、急に慌ただしく一ヶ所に集まり、地響き高らかに移動を始めたので、双剣を構え興奮と緊張に息を荒げていると――案の定、一頭のウルクススが、洞窟から白い体躯を揺らし現れた。
ホットドリンクで暖かい身体は強ばることなくすぐに動いた。
私の存在に気付いたらしい、ウルクススの眸がぎらりと光る。
ウルクススは吠えた。
刹那、背後に殺気を感じて振り返る。
切り立った崖の上にはもう一頭、ウルクススがいた。白毛を風になびかせ蛇腹をうねらせ滑り降りてくる。
二頭目のウルクススは、洞窟から出てきたウルクススに向けて吠えた。
彼等には、私の姿が見えていないのか!
それはハンターにとって屈辱極まりないことだったが、連れがいないと、こちらもつらい。下唇を噛んで、双剣を構えたまま、二頭のウルクススの闘いを見詰めていた。
爪で裂き拳を奮い噛み砕く。
知性のない獣同士の闘いは、すぐに決着がついた。どちらがどちらかはよく判らなくなっていたが、片方のウルクススの首根から鮮血が噴き出し、ウルクススは甲高い断末魔を上げ、巨体を反らし、氷上に沈んだ。
次は私かと、柄を握る手に力を込めた。
勝者はひくひく鼻をひくつかせ、私にのそのそと歩み寄ってきた。今の闘いで弱っているのであろうか、先程まで殺気立っていた眸に戦意はないように見え、私は慌てて痺れ罠を張った。
罠を挟んでウルクススとの距離が縮まる。
痺れ罠のばちばちという音に、ウルクススは長い耳を動かし、再び眸に闘志を灯らせた。
ウルクススが飛び掛かって来た時には既に、私は瞬時に逃げ出そうと背中を向けたが、死を覚悟した。
ウルクススの性欲は半端じゃないぜ。
先程のハンターの言葉が痺れた頭を駆け抜けた。
息がうまく出来ない。
背中から圧迫されているようが、重さは感じない。脇腹から腰に掛けて、とてもくすぐったい。
冷たい地面に押し付けられていたが、冷たくもない。ウルクススの柔らかい体毛に包まれるように、のし掛かられていた。
「あ……う……」
鋭利な爪がぎこちなく防具を割り、肌に触れ、鳥肌が立った。
ウルクススの短い吐息が耳元で弾んで、身震いした。ウルクススは私の尻に下半身を擦り付け始め、防具が全て引き剥がされた時には、血の気が引いた。
「私はっ……雌じゃない!」
足掻いたが、がっちりと後ろから押さえ付けられ、身動きは取れなかった。
「……ん、あ、い、 嘘だぁ……」
剥き出しになった尻に、ぬめぬめとしたものが宛がわれる。それは当然だとでもいうように、肉壁を割り、胎内を進んだ。ウルクススの体液で、繋がった肉杭と蜜壷がぐちょぐちょと粘っこい音を立てた。
「あ……いぎっ……おっきぃ…!」
味わった事のない幸福な圧迫感に、身体に力が入らなかった。後ろで腰を打ち付けるウルクススの息は少しずつ早く短くなり、私の喉からは、この理不尽な快楽を悦ぶ声が漏れた。
モンスターに犯され悦ぶなんて、とんだ淫乱だと、微かに残った理性が警鐘を鳴らす。
「あっ、あ!ん、いい……!」
人間では決して味わえぬ愉悦だった。
吐き出された精はごぽごぽと逆流し溢れ内腿を濡らす。
ウルクススの体温と快楽に、訳が解らなくなる。
与えられる悦びと子種に、喘いだ。びくびくと背中をしならせると、一際大きく艶やかな声が出た。
どうなってもいいと思った。
私の胎内に子種を注ぎ乍、ウルクススは子孫の繁栄を願い、勝利を噛み締めていたに違いない。