名前を呼ばれ、マントの裾を引かれた。
視線を下げると、物言いたげな顔をした契約者である少女と目が合った。
「あの」少女の頬が赤くなる。「また、この前のアレ……したいんですけど」
言葉の意味を理解するのに、時間は要さなかった。
「自らねだるようになったか。汝も女だな」
「だって」少女は視線を逸らし、唇を尖らせた。「気持ちよかったから……」
「よい。今宵、汝の部屋に赴こう」
「待ってます」
控えめな声のあと、マントの端を引く手が力むのを、見逃さなかった。
◆
少女の部屋を訪うと、彼女はベッドの淵に腰掛けて、緊張した面持ちでこちらを見上げた。長い睫毛に囲われた澄んだ眸の奥を、潜熱がよぎる。
相変わらず窮屈だと思いながら、身体を屈めたままそばまて歩み寄り、彼女に手を伸ばす。
「ボタンは、自分で外しますから」
「そうか」
己からすればひどく小さな手が、寝衣のボタンを外していく。ひとつ、またひとつと確実に外されているのに、この間ですらもどかしく感じる。しかし、間から覗く白い肌にはそそる。
寝衣がなだらかな肩を滑り落ち、丸みを帯びた女の体が晒される。身体を覆うものがショーツー枚だけになり、彼女は恥じらうように唇を引き結び、ひんなりとした腕を胸元でクロスさせ、肩を抱いた。
「やっぱり……恥ずかしいです」
恥じらう姿が愛らしかった。一糸纏わぬ姿が見たくなり、彼女に横たわるように言った。
「汝は色が白いな」
「……んっ」
わずかに開いた足の間に手を滑らせ、淡い色合いの下着の上から、肉の割れ目を指の腹で愛撫してやる。すぐに、布地がじんわりと湿って、染みができた。
重なっている膝頭を離してハの字に閉じられていた足を開かせ、下着を脱がすと、夭夭とした肉体がシーツに咲いた。
「余を見るがよい」
指先を頬に添えてこちらを向かせる。まだどこか幼さの残る顔立ちには似つかわしくない色気があった。そこにあるのは欲情した女のかんばせだった。眸には涙の膜が張り、頬には朱が差し、微かに開いたバラの花弁のごとき唇からは熱い吐息が漏れている。
ついこの間まで交合すらしたことのない少女が、己の指で花を散らし、善がり、果て、今こうしてまた愉悦を貪ろうとしている。本能的なのは、よいことだと思う。
両手で牙をさすられたかと思うと、彼女は身体をひねって牙を抱き抱え、唇を押し付けた。
「はやく、きてください」
熱烈な口付けにこたえるように、恥丘の割れ目に指を這わせた。肉襞は潤み、雌穴は雄を求め、ぬらぬらと濡れていた。
指先をあてがう。ぐち、と湿った音が跳ねた。肉色の亀裂を上へ下へとなぞると、少女の身体が震えた。
指の腹で肉芽を詰ってやると、甘い声が耳朶を打った。胎内の入口に添えた指に小さく力を込める。少しの抵抗感のあと、指はしとどに濡れた肉の間に沈んでいった。
胎内は熱く、ぬめっていて、狭かった。
「あ、あ、あぁ……!」
中をかき混ぜてやると、粘っこい水音が嬌声に混じった。奥まで挿入した指をゆっくりと手前に引き、焦らすように小刻みに前後させれば、湧いた愛液が指に絡みつき、ぬちぬちとみだらな音を立てる。
少女は喉を反らし、身を捩り、与えられる熱量と愉悦に肌を熱らせている。その様が愛おしく思え、彼女の髪を撫で、頬に触れた。今この瞬間も、マスターのすべてが己のものだ。
律動に合わせて、重量感のある乳房が軟体動物のように弾む。つんと尖った乳頭を指の腹で刺激してやれば、甘美なる声は熱情をたぎらせた。
「余も昂ぶるではないか」
身体の芯が熱かった。片手で前垂れの下を弄れば、ほめく本能がまろびでる。血管を浮かせて屹立した雄を見て、少女はとろけきった顔を一瞬強張らせた。それもそうだろう。規格外の大きさのものが目の前にあるのだから。
「安心するがよい、立香。汝には、無理強いはさせぬ」
片手で自身をしごき、もう片方の手で肉色の花を蹂躙する。
「あっ、い――いっちゃう、イヴァン、らい……だめ、そこっ……♡ あ、あああ♡」
胎内の深くを突く動きを、円を描くような動きへ変じると、彼女は仰け反った。胎内が指の動きを追うように攣縮する。絡みつくのは愛液と媚肉、そして、まるで精を搾り取ろうと蠢く女の本能だった。
折り曲げられていた両足が痙攣し、張っていたつま先が丸まる。
「〜〜〜っ♡ あ、あ♡ はああっ……♡」
絶頂の瞬間、彼女は数瞬息を詰まらせ、酸素を求め大きく喘いだ。
さだまらない視線がこちらに向く。
果ててなお、快楽の淵へ攻め立ててやると、股座はいっそう濡れ、愛液は白く濁った糸を引いた。
「奥っ、あたって……♡ あ、あ♡ また、きちゃううう♡♡♡」
指先で胎内の深くを探る。子を孕み、育てるための臓腑の入口を突き、上壁をごりごりと擦り上げれば、彼女は下腹部を波打たせてまた果てた。
一方で、肉杭を包み込みゆるゆると上下させていた手の動きが無意識に早くなった。規則的なストロークを重ね、絶頂が近くなる。先端から溢れた先走りを幹に塗りたくれば、潤滑よく、スピードも増した。子種をどこに吐き出すかは、もう決めていた。
「余の子種をその腹に受け止められることを悦ぶがよい」
少女の秘所から指を引き抜き、腰とシーツの間に手を差し込んで、浮いた下肢を支え、濡れそぼつ股座に昂ぶる本能を押し付け、密着させる。
「なにを……?」
なにをされるのか理解できない、とでもいうような声音だったが、答えなかった。抑えられなかったのだ。ふっふと息を荒げ、ひくついた雌穴に目掛けて勢いよく子種を注ぎ込む。
「あっ、あぁっ……熱いの、出てる……♡」
「…………っ」
当然迸った白濁が胎内にすべておさまるわけもなく、拓かれた腹を満たした子種はどぷどぷと溢れ、尻を伝い、太い糸を引いて滴り落ち、シーツを濡らした。
刹那的な激情がすっと去る。
「よい……実によい。これで汝は余のものだ。何人たりとも余から奪えぬ」
シーツに身体を投げ出して浅い呼吸を繰り返す少女の顔を覗き込む。
「お腹の中……熱いです……」
片手で腹をさすり、静かな声で囁いた少女は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
潜熱の余韻が降り注ぎ、目に見えぬ情愛をかき立てた。