「あんた、鼻赤いぞ。寒いんだろう」
鼻を啜りながらマップを眺めていると、上から聞き慣れた声が降ってきた。
顔を上げてすぐに、腕を組んでいるヴェルナーと目が合った。身じろぎして簡易椅子に座り直して「ヴェルナー、あんたも鼻が赤いぞ。頬も真っ赤だ」苦笑いする。
ヴェルナーは白い息を吐いて眉間に皺を寄せた。「寒いんだよ」
今しがた着いたばかりだし、調査にもこれから行こうと思っていたからまだ飲んでいないが、『氷霧の断崖』の寒さは、やはりホットドリンクなしでは堪える。
ふたりで顔を見合わせる。この様子だと、どうやら、ヴェルナーもまだホットドリンクを飲んでいないようだ。
「ホットドリンクを飲もうか」
頷いて膝を打ち、立ち上がる。
「いいね。賛成だ」
ヴェルナーと並んで歩き出す。冷たい風が吹いて、ふたりして首を竦めた。さあ、早く火にあたろう。