リエーニエの東部で見付けたのは、色とりどりの珍しい花が咲き誇る、大小様々な壺人が住まう長閑な小さな村だった。
村の高台にある家の軒下にちょこんと座った幼い壺と話をするうちに友人になってから、この村に時々足を運ぶようになっていた。
善良なる無垢な壺人と過ごす時間というのは、狭間の地の玉座をめぐる苛烈な戦に身を投じる私の束の間の癒しになった。
私の手は彼等を世話する「壺師」にはむいていないらしいが、彼等は関係なく親しく接してくれた。
陽の光が穏やかに降り注ぐその日も、私は壺村を訪れていた。
「そういえば、お姉ちゃん、アレキサンダーのおじちゃんは知ってる? 昔はこの村にいたんだけど、英雄になるための旅に出ちゃって、連れてってって言ったんだけど、「戦士は孤独なものだから」って……。寂しいけど、すごくかっこいいんだよ。お姉ちゃんも、アレキサンダーのおじちゃんに会ったら、戦い方を教えてもらうといいよ。すごく硬くて、強いんだからね」
小壺は嬉しそうに言った。友の名が出てはっとして「アレキサンダーなら知ってるよ」と返すと、彼は小さな手を興奮気味に握って「おじちゃんと知り合いなんだね?」と声を弾ませた。
「アレキサンダーは私の大切な人なの。この前は一緒に赤獅子城でラダーン祭りに参加して、ラダーン将軍を葬送したんだから」
少しだけ得意げに胸を張ると、幼い壺はラダーン祭りの話を聞きたいとねだってきた。いつの時代も子供は冒険譚に憧れるものなのだ。
日が傾くまで友との共闘を語り聞かせてあげた。
アレキサンダーとの出会いについても聞かれたが、アレキサンダーは小壺にとっての英雄なのだから、彼との邂逅については——穴に嵌って動けなかったところを助けたとは言えない——正直に話さない方がいいだろうと思い、戦場でピンチを救ってくれたことにした。
「ねえ……お姉ちゃんってもしかして……おじちゃんのお嫁さんなの?」
「えっ!?」
村に響き渡るくらいの、素っ頓狂な声が出た。慌てて辺りを見回し、首がもげそうなくらい横に振る。鎧の下、胸の内側で、心臓が暴れ牛のように跳ねている。
「そういうのじゃないよ!」
「そうなの? アレキサンダーのおじちゃんのことをすごく大切に思ってるみたいだから、てっきりそうなのかと思っちゃった」
純粋な子供は、座り込んだ階段の一番上から投げ出した足を揺らしながら「そっかあ」と残念そうな声を上げた。
戦闘のあとのように心臓がうるさい。おまけに顔がひどく熱い。俯いて深呼吸する。聞こえるはずのないアレキサンダーの豪快な笑い声が聞こえた。
「お姉ちゃん? 照れてるの?」
「照れるよ、そりゃあ」
幼い壺は変わらず短い足をぶらぶらさせながら「お姉ちゃん、おじちゃんのことが大好きなんだね。ねえねえ、またおじちゃんとの話を聞かせてよ」と無邪気に笑った。