ラーヴァナ×光の戦士

 

※負けて無理やりツガイにされた光♀が素っ裸にされて指で撫で回される話。一部合意の上ではない暴力表現含みます。ご注意ください。念のためですが挿入はないです。

 グナース族によって再び召喚されたラーヴァナは、目の前に現れたハイデリンの加護を受けたアウラ族の女を見据えたまま胸に込み上げる高揚感を噛み殺し、気管から鋭く吐き出した。
 この女とはかつて武と武で語り合った。あの時敗れたのはラーヴァナだったが、未だかつてあれほどまでに血湧き肉躍る闘いを繰り広げたのははじめてだった。
 この誉高き強き者が己の僕になればどれほどよかったかとさえ思う。しかし、ラーヴァナを前にしても、刃を交えようとも、女は〈信徒〉にはならなかった。ラーヴァナは無性にこの女がほしかった。そこで考えた。〈信徒〉にならないのであれば——たとえば番はどうだろうか、と。
 種族や姿形など、さしたるものではない。番として選ぶならば、この女がいい。

 武神である己に勇を示した誇り高き剛たる者の来訪を、ラーヴァナは喜んだ。思わず四本の愛剣を握る手にも力がこもる。
「我を再び斃すというか。その心意気や良し。我が勝てば、その穢れなき魂——否、その身を頂戴しよう」
 女は一刹那眉を寄せ、訝しむようにラーヴァナを見上げた。
「魂じゃなくて、身体を? 私を取って食べようとでも?」
「否。我が番として迎え入れよう」
 ラーヴァナを映す長い睫毛に覆われた女の目が丸くなる。聞き間違いではないことを示すため、ラーヴァナはもう一度告げた。
「敗れれば、我が番として、傍に置く」
「……絶対に敗けない」
 女の小さな声はラーヴァナの聴覚器官を魅惑的に震わせた。
 互いに剣を構える。ラーヴァナは咆哮した。全身から放たれる覇気が弾けた。剣戟が武神穴に響く。一合二合と斬りつけ、離れてはぶつかり合う。ヒトの身でありながら、己と互角に渡り合い、武を極めんとする女——こんなにも崇高で美しい存在があるだろうか。
「ハァッ!!」
 ラーヴァナは右側の剣を横に振り抜き、振り下ろされた女の剣を弾き飛ばした。鋭い刃から金属音が跳ね、女の剣は弧を描いて飛んでいき、岩壁の手前に突き刺さった。刃が激しく触れ合った際の衝撃の残響が薄れ、洞穴内に静寂が戻る。
「その身、貰い受けるぞ」
 ラーヴァナは女を見下ろし言い放った。物陰に隠れて息を潜めていた〈信徒〉たちが、わらわらと寄ってきて女の背後で歩を止める。彼らの眼差しには女に対する恐れがあった。
「蛮神の番だなんて、冗談でしょう!」
 ラーヴァナを見上げる女の眼差しにもまた恐れがあった。
「武を交える者に二言なし。我が番として愛でよう」
 ラーヴァナは愛剣のひとつを宙に浮かせ、空いた手を女に伸ばし、三本の指で掴んで顔の前まで持ち上げた。女には顔の横に牙のように太い角がある。己の触覚とは違うのか、興味があった。触れると、女は「やめて」とかぶりを振った。やはり、触覚と同じく、ここは敏感らしい。離れた場所で〈信徒〉たちが香を焚きはじめた。
 ラーヴァナは女を下ろし、纏っているものを脱がせるように〈信徒〉たちに命じた。女は抵抗したが、〈信徒〉たちは容赦なく女を押さえ付け、蝶の羽をもぐようにして服を脱がせていった。悲鳴にも似た声はやがて途絶え、〈信徒〉たちが衣服の切れ端を手に離れると、へたり込んだ女は胸部を隠しながらラーヴァナを見上げて「最低!」吐き捨てた。
「我らには甲殻がある。お前には鱗がある。それで十分ではないか?」
 ラーヴァナは再び女を持ち上げた。白い身体は柔らかい。女が膝を合わせて、両腕をクロスさせて肩を抱いているので、ラーヴァナは剣をもう一振り離し、足を伸ばさせ、手を剥がした。女は観念したのか、顔を逸らして震えていた。
「ヒトは、この薄い腹に子を宿すのか?」
 女の平たい腹に、ラーヴァナは指を置いた。伝わってくるのは、己にはない、体温と張りのある滑らかな肌だった。力加減をして腹を撫で摩る。女は「あっ」と声を漏らした。
 〈信徒〉が焚いた香の馥郁とした甘い煙が立ち上り、女の身体を掠めていく。晴れて番となったラーヴァナと女を祝福する煙がヒトの意識を蕩けさせ、快楽へ導くものであることをラーヴァナと女は知らない。
 ラーヴァナの手の中で、女はおとなしくなった。ラーヴァナは女の肉体を指でなぞった。華奢な輪郭も、細い首も、丸く豊かな胸も、子を孕むための腹も、引き締まった太腿も、その間の女の部分さえも——慎重に指の腹で撫でた。
「やだ……お腹、撫でないで……」
「何故、触れられたくない」
「お腹の奥、切なくなるから、やめて……」
「胎の奥——?」
 女はもじもじと膝頭を擦り合わせた。ラーヴァナは太腿のあわいに指を差し込んで、股座に指の背を押し付けた。足の付け根は濡れていた。甲殻と肉が擦れて、ぬちっという粘っこい音がした。その音が聞こえたのか、女は泣きそうな顔をした。
「いやなはず、なのに、なんで……」
 女の口唇から熱を含んだ吐息が漏れる。ラーヴァナは三本目の腕を女に割いた。柔らかい肌を傷つけぬように、女の唇に指の背を寄せて吐息を掬い取る。女はラーヴァナの指を小さな小さな舌で舐めた。舌は太い指に絡まった。指を舐められ、吸われ、ラーヴァナは驚いたが、心地良さを感じた。
「もっと、たくさん触って……」
 女の懇願は甘い毒のようだった。ラーヴァナを侵蝕していくのは、抱いたことのない、燃え上がるような情熱だった。女の身体を引き寄せて顔を擦り付ける。ラーヴァナの方が巨躯だが、女に包み込まれている気がした。
「ああ……愛し合おう、我が番、我が焔」
 ラーヴァナは低く囁いた。腰回りがひどく重たい。
 灼熱に抱かれて、女が微笑む。果たしてヒトはこれを愛と呼ぶのか堕落と呼ぶのか、それを知る者はここにはいない。