夜の深さを知っている

「今日は一段と冷えますね」

 喉を撫でてやると、恍惚の表情でミツマタは言った。言葉と表情が合ってない気もするが、そこもまた可愛いところだと思った。

「そういえば、お前も冬眠するのか?」

「いえ、幸い棲家は暖かいので、冬眠はしません。それにしても、今日は寒い。べビン様、お風邪など召されませんように」

 千切れた尾を優雅に左へ右へと振るミツマタを見詰めて、少し考える。

「ミツマタ」

「はい?」

「おいで」

 むっちりとした身体を重ねて小さく丸まったミツマタを抱き上げて、熊の毛皮でできた詰襟の上着とシャツの間に仕舞い込む。

「べビン様? ……よいのですか?」

「しばらくそこにいろ。あたたかいだろう」

「はい、とても。それに……ふふ、べビン様の匂いがして落ち着きます」

 襟の間から双頭を覗かせ、ミツマタは赤い舌をちろちろと出し入れさせた。機嫌がいい。

 一人と一匹でぬくぬくと暖を取りながら、束の間の穏やかな時間を過ごすことにした。