色とりどりの瑞々しいサラダと、バターの香りがするトースト、半熟の目玉焼きにカリカリのベーコン。オレンジジュース――この完璧な朝食に添えられるのは、マーマレードジャムと苺ジャムだ。
彼女はいつも苺ジャムを選び、オレは必ずマーマレードジャムを選ぶ。
はじめてこの食堂で彼女と朝食を摂った日、少し悩んでマーマレードジャムを選んだ日からそうだった。
「デイビットって、いつもマーマレードジャムだよね」
ジャムを塗っていたトーストから視線を隣に向けると、彼女は食べかけのトーストを手に微笑んでいた。
「そういう君はいつも苺ジャムだな」
「うん、子供の頃から苺ジャムが好きなの」
マーマレードジャムも美味しいよねと結んで、彼女はトーストを頬張った。
彼女から意識を逸らしてジャムの瓶に蓋をする。中身は、もう半分もない。
「デイビットもマーマレードジャムが好きなの?」
問い掛けは果実のように生き生きとしていた。
「食べ慣れていなかったが、選ぶ時に最初に君が思い浮かんだ。それ以来こっちを選んでしまう。だから……そうだな、好きだよ」
見慣れた瓶から再び彼女に顔を向ける。
「君とこうして一日のはじまりを迎えられることを嬉しく思う」
「わたしも、デイビットとこうして毎朝一緒に朝御飯を食べられるのが嬉しいよ。今日も頑張ろうって思えるの」
何故か、周りにいたサーヴァントたちの視線が集中する。
トーストを一口齧る。マーマレードジャムの酸味と爽やかな甘味、そして、かすかな苦味が口いっぱいに広がった。
朝に似つかわしい煌びやかなオレンジ色は、彼女に似ていると思う。
今日も、オレと彼女の一日がはじまる。