ステイシー・プラットは、椅子に拘束されたまま、どこでなにを間違えたのかを鈍った頭の片隅で考えながら、ただただ彼から浴びせられる言葉を震えながら聞いていた。もう涙も出ない。痛みも感じない。慈悲を乞うことも無駄だと悟った今、早くこの地獄から解放されることを強く祈っていた。
「お前は弱い」
弱い、そうだ、オレは弱い。弱い。
弱いから、屈してしまったのだ。
狩られる側になってしまったのだ。
喰われる側になってしまったのだ。
間引かれる側になってしまったのだ。
足下に落としていた視線をおそるおそる上げる。厳つい顎を覆う赤毛の髭から上が見られない。
「オ、オレは弱い」
歯の根が合わない口から絞り出した声は掠れていた。
「オレは弱い人間だ」
「そうだ、それでいい」
満足そうな穏やかな声が降ってきて、目の前でナイフの刃が光り、ベルトによって肘掛けと密着していた腕の束縛が解かれた。
「オレは、弱い」
復唱すると、また目の前が水っぽく歪んだ。嗚咽し、椅子から崩れ落ちる。コンクリートの床に突いた手を片方彼に踏まれた。
幼い子供のようにみっともなく泣いて、何度も何度も自分に言い聞かせるように、己は弱いと口にする。そのたびに、身体がバラバラにされてしまうようだった。
壁に張り付いた影は、まるで一匹の犬のようだった。