※強姦描写含みます
――なんで。どうして。
ベルトを外し、パンツを下ろして背中を向けるよう命令された時、そんな当たり前のことを思った。
けれど逆らえるはずもなく、言われるがままにし、上は制服のシャツ、下は下着だけという情けない姿になり、手で股間を隠すようにして、やはり、言われた通りに、ジェイコブ・シードに背中を向けた。
目の前の木製のデスクの上に散らばった書類や写真をぼんやり見下ろして、怖くなって後ろを向こうとした時、いきなり首の後ろを掴まれ、そのままデスクに押さえつけられた。顔を横に向けていたおかげで鼻を強打することはなかったが、右頬が硬い音を立ててぶつかった。鈍い痛みに顔をしかめる。
「いいか、声は出すな。駄犬の鳴き声は聞きたくない」
第二の命令が耳朶に届いて、後頭部を押さえつけられる。
デスクに突っ伏したまま歯を食い縛っていると、下着の淵が引っ張られて下方にずらされ、尻がひやりとした空気に触れた。反射的に手をばたつかせるが、デスクの上の書類の束を床にぶちまけただけだった。
もしかして己は犯されるのではないだろうか、と、恐ろしい考えが眼窩の奥を熱くさせる。
剥き出しの尻たぶを鷲掴みにされ、考えは確信に変わり、氷のような恐怖が身体を支配した。
「い、いやだ、やめてくれ! やだ……やめてくれ……それだけは……」
鼻の奥がツンとして、目の前がじわじわと水っぽく歪む。言葉の終わりは嗚咽に変わった。
弾けるような湿った音がして、尻の真ん中になにか生暖かい液体がかけられる。彼が唾を吐いたのだとわかった時には、窄まった孔に硬いものが押し当てられていた。
「あっ」
刹那、脊髄を鋭い痛みが駆け上がった。経験したことのない痛みに目を瞠る。
「いぎっ、いっ……ああああああ!!!」
爪が掌に食い込むほど強く拳を握る。
排泄器官に突き立てられた硬く太い凶悪なものは、薄い粘膜の間を瞬く間に裂き、体内を割った。
「あっ、あっ……いい、痛い! 痛い!」
「暴れれば暴れるほど入っていくぞ」
彼がのしかかってきて、彼の身体とデスクの間で背骨と肋骨が軋む。
「さすがに、キツいか」
「ひ、ひぃっ……はああ……ぐう、うう……」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったであろう顔を歪ませて、震える声で抜いてくれと頼んだが、もちろん受け入れられる筈もない。
ぬちゅ、と粘っこい水音がして、体内にあった異物が引いた。そして、また奥を一突きされた。疼痛が腹を穿つ。腹の底が焼けるように熱い。
彼はゆっくりと腰を揺すった。引いては押し寄せる疼きは思考を麻痺させ、羞恥心と言葉、そしてあったはずの理性と一握りの自尊心を奪っていく。
打ち付けられる肉杭は容赦なく肉壁をほぐし、奥へ奥へと侵入していき、やがては濡れた尻たぶと彼の下腹がぶつかって、ぱんぱんと粘っこい規則的な音が弾け、荒い息遣いに混じった。肉と肉がぶつかる破裂音に慄き、声に出して泣いた。泣き喚いた。
「声は出すなと言ったはずだ」
耳に熱い息がかかり、次の瞬間には肩口に噛み付かれた。歯はシャツを破る勢いで厚い肉に食い込み、身動きを封じられる。
彼は腰を振り続ける。
ああ、これではまるで、己は種付けされる雌犬だ。なんて惨めなのだろう。
「やだ、やだ……」
譫言のように言って、諦めて目を閉じる。
体内に子種を吐き出されるのが怖かった。
孕むわけでもないのに、証を残されるのが、酷く怖かった。