ブラキディオス×女ハンター

「なんだ、お前さん、ハンター辞めて炭鉱夫になったのか?」

 いつものように、火山にお守りを掘りに行こうとカウンターで火山の採取クエストを受注していると、ギルドマスターが珍しく声を掛けてきた。私は受付嬢に向けていた笑顔をそのままギルドマスターに向けたが、ギルドマスターの酒で赤くなった顔は苦笑いそのものだったので、思わず肩を竦めた。

「まぁ、命掛けてますから」

 そう冗談混じりで言い切ると、ギルドマスターはいつもするように「くれぐれもブラキディオスには気を付けてな!」豪快に笑った。

 見慣れた風景を前にクーラードリンクを一気に飲み干して、覚えてしまったルートを走り抜ける。小型モンスターには目もくれず、スタミナが続く限り走った。
 先ずは8番エリアに行き、そこから「炭鉱夫」の仕事を始める。いいスキルの付いたお守りが出ることを祈り、ひたすらピッケルを振りかざすのだ。
 もうかれこれ、どれくらいこの作業をやっているだろうか。暫く大型モンスターと戦ってはいない。狩猟環境は不安定でも、今まで大型モンスターと遭遇したことは無いし、いざとなったらモドリ玉を使えばいい。

 ああほら、8番エリアはもう隣だ。

 突如、ごうごうと熱風が吹いた。
 地面から身体を突き出していたウロコトル達が皆同じ方向に顔をやり、分厚い嘴を鳴らした。
 何事かと思い、足を止め、アグナコトル達に倣って辺りを見回すと、立ち込める熱気を裂き、奥から姿を現したのは、砕竜、ブラキディオスだった。
 心臓が跳ね、頬がひくつく。持ってきているのはピッケル、クーラードリンク、モドリ玉の3点だけだったのだから――どうするかは決まっている。
 逃げるのだ。全力で。
 考えるよりも先に、それこそ脱兎の如く逃げ出した。
 ブラキディオスが追い掛けてくる。息も絶え絶えに隣のエリアに着いて、少しだけ余裕を取り戻した直後、ブラキディオスもやってきた。

「なんでよっ!」

 また逃げる。次は9番エリアに。
 彼処なら足場は狭いし、大型モンスターが走り回るのは無理だろう。
 山菜じいさんが化物を見るような目で此方を見たが関係ない。
 ピッケルを取り出した時、心臓が握りつぶされるような恐怖が私を襲った。
 来たのだ。ブラキディオスが!
 ピッケルが手から滑り、足元にぼとりと落ちた。
 ブラキディオスは顔だけ岩影からひょっこり覗かせ、紅蓮の眸をらんらんと輝かせ、様子を窺うように鼻をひくつかせている。
 こうなれば、やるしかない。
 背負っていたライトボウガンに手を伸ばした。じっと此方を見詰めるブラキディオスの顔目掛け一発撃ち込んでやろう……しかしこのブラキディオス、怯んでしまいそうなくらい綺麗な眸をしている。おまけに、少し小さいような……。
 武器を下ろし、眉間に皺を寄せ、まじまじとブラキディオスを見た。
 やはり小さい。こう見ると中々愛くるしい。
 にじりにじりと近寄って――やっぱり怖くなって、踵を返す。
 目にも止まらぬ速さで、襟首を噛まれた。息が詰まって、目の前で星が飛んだ。

 首筋は唾液に濡れ、襟元を引っ張られている為、防具の留め具が首に食い込んで息が上手く出来なかった。
 どれくらいブラキディオスに咥えられ、運ばれていたのだろう。
 もみくちゃにされ、薄暗い洞穴の中で、乱暴に放り出された頃には、クーラードリンクの効果が切れていた。
 幸い水辺の近くなのか、茹だるような暑さは感じなかった。
 洞穴内に風は無く、食べ残しが角で山になっていて、生臭い。
 尻餅を着いたまま、ブラキディオスを見上げる。口端からはだらだらと唾液が糸を引いている。
 ブラキディオスの顔がぐっと近付いてきて、ぬっと舌が頬を舐め上げた。

「……な、にっ!」

 肌が一瞬で粟立ち、身体が震えた。
 ブラキディオスはくるくる小さく鳴いて、それこそ甘えるように頬を擦り寄せてきた。鶏冠や丸みを帯びた両腕の先に着いた粘液に色はないから、爆発する心配はないが、一体どういうことなのか理解が出来ず、ただただ目を瞬せる事しかできない。
 ブラキディオスに舐め回され、ざらついた地面に背中がついた。
 必死にブラキディオスの顔を押しやり遠ざけようとすればするほど、舌は肌に絡み付いた。

「やだ、やめてよ…」

 かっと身体が火照る。
 ブラキディオスの舌先が防具の隙間に滑り込んできた。
 薄闇の中で砕竜の眸が炯炯と光っている。不純物のない、宝玉のようだと思った。
 食い殺されるかもしれない。いつ、噛みつかれるかわからない……それなのに、理性は少しずつ解れていった。
 いや、きっと、噛みつかないかもしれない。
 だって、ブラキディオスは今も夢中になって私を舐めているのだから。
 震える指先で防具の要を外していく。 肌着は上下ともブラキディオスの唾液でぐっしょり湿っている。

「もっと……して?」

 足を開けば、ブラキディオスは荒々しく息を吐き、鶏冠の先を私の腹部に押し付け、顔を私の股ぐらに埋めた。
 ざらついた舌が秘部を探る。
 味わったことのない快楽が一気に脳天を貫いた。
 下着越しに肉芽を刺激され、唇を噛み締める。愛液が溢れているのが解る。ぬちゅぬちゅと淫猥な音が響いた。
 ブラキディオスが立ち上がり、その間に濡れた下着を脱いだ。
 乳房が溢れると、薄紅の乳首は硬くなっていた。
 求めるようにブラキディオスに手を伸ばす。
 今は快楽を貪る事ができればそれでいい。思考回路が痺れ、熱っぽい溜息が漏れた。
 ブラキディオスが私を跨ぐと、足の付け根でぬらぬらと濡れる肉杭が見えた。その大きさに、蜜壺が疼く。

「……あっ、んん…!」

 しとどに濡れた蜜壺に宛がわれた杭は、硬く熱い。ブラキディオスは身体を器用に折り曲げ、胎内を突いた。舌で解れていた肉壁はブラキディオスの雄を飲み込んでいく。下腹部から広がっていく甘い鈍痛は毒のよう。
 ブラキディオスは両腕を地面に突き、ぎこちなく腰を揺する。雄には太い血管がいくつも浮かび、黒耀の腰を淫らに揺さぶって、胎内を探っている。 蜜壺に滑り入る肉杭はブラキディオスの舌と同じ色に見える。先端まで引き抜く癖に、また根本まで一気に沈める。その抜き差しの度に、私の唇から艶っぽい声が零れた。

「ん、あッ、ああ……!」

 快楽で朦朧とする意識の中、ブラキディオスの腹の下で喘いだ。肉が重なるいやらしい音が、ブラキディオスの寝床に響く。
 時々ブラキディオスが私の顔を見る為か、俯くと、突かれる度に揺れる乳房に唾液が滴った。
 ブラキディオスと目が合った。宝玉にも似た眸が潤んでいるようにも見えた。
 このブラキディオスが愛しくてたまらないと思えるのは何故だろうか?

「あっ、い…っちゃうぅ…!」

 目の前で閃光を見たようにちかちかと何かが弾け、ブラキディオスの股に絡めた足から力が抜け、爪先が痙攣した。
 ブラキディオスは喉を鳴らし身震いした。肉杭がびくびくと脈打つのを感じ、激しい律動が止まり、胎内に精が吐き出されるのを感じた。
 腹が波打った。
 ゆっくりと雄を抜かれ、溢れた白濁が地面に吸われる(下に敷いた防具の一部に染みを作ってしまうだろう)。

 まだ熱を帯びたままの身体を小刻みに震わせ、指を唇にやり、ブラキディオスを見詰める。
 ブラキディオスは私の顔をべろりと舐めて、低く鳴いた。
 下半身に力が入らず、肘を支えに起き上がる。

「もっと、して……」

 掠れた声を上げ、情欲のままに尻をブラキディオスに突き出せば、逞しい肉棒はぱっくりと開き精を滴らせれる肉孔を突いた。臓器ごと突き上げられるような鈍い痛みはやがて求めていた欲に変わり、声にならない声を紡ぐ唇を噛み締め、髪を振り乱す。汗ばんだ肌と艶やかな漆黒の甲殻が重なり、粘っこく生臭い精液が胎内に放たれる。
 何度もブラキディオスと交わった。
 この小さなブラキディオスをもっと知り、傍らにいたいと願った。
 抱き締めたブラキディオスの体温を感じながら、

「……赤ちゃん出来るかな」

 指先で、太股を伝う粘っこい子種を拭い舐め取って、うっとりと目を細めた。

 採取クエストに50分も費やしたのはハンターになって初めてだったが――異種族との一線を越え、愛に溺れ、淫れた――充実感溢れるクエストだった。
 あのブラキディオスには今でも会いに行く。
 勿論採取クエストで、だ。
 その所為か「お守りなんざ諦めて、たまにはハンターらしく狩猟をしたらどうだ」とギルドマスターにからかわれるが、私はまだ暫く、火山に通い続けようと思う。